2013年のニュース
2013/12/27 シンガポール・サンマリノ租税条約
去る12月11日、シンガポールはサンマリノ共和国との租税条約に署名しました。
人口3万2千人、面積61.1平方キロ(八丈島が69.52平方キロ)、イタリア本土に囲まれた世界で3番目に小さな国ですが、GDPは816百万ユーロ(2009年)と発表されているので、一人当たりGDPはおおよそ25,500ユーロ、1ユーロ144円換算で約370万円になります。主要産業の観光では、年間330万人もの外国人観光客を集めています(日本全体で年間860万人(2012年実績))。観光客の購買意欲に影響する消費税はなく、国家財政は17%という低税率の法人税のみで成立していることから、サンマリノにおける観光産業の重要性がうかがい知れます。
今回の租税条約では「配当に係る源泉地国課税は原則免除」となっており、源泉税も課税されないことから、今後、サンマリノが欧州の統括拠点としても注目されてくるのではないでしょうか。
2013/12/24 ミャンマー元年
ミャンマーが注目されています。
欧米の経済制裁解除によって軍事政権下でも民主化は急速に進展し、日本を含め先進諸国からの巨額の投資を集めました。来年はASEAN議長国となるため、域内人口6億人を超える経済圏でのリーダーシップを発揮し、2015年のASEAN共同体(AEC)を成功させて、経済統合や域内関税撤廃に主導的な役割を果たすことを期待されています。
ただし課題も山積みで、電力や道路などの基本インフラ不足の解消も急務ですが、外国投資法や会社法といった投資関連規制の整備と透明性の高い運用も求められています。租税条約網は英国を含め7ヶ国に留まり、日本とは未締結の状況で、二重課税排除のリスクが十分にクリアされていません。ただ、シンガポールとの間には2011年から租税条約が施行(締結は1999年)されているため、迂回投資先として有効な選択肢となっています。
勤勉で英語圏、かつ親日なミャンマーに、今後も注目していきたいと思います。
2013/12/20 FCF、就労許可証の新基準
シンガポール労働省(MOM)が去る9月23日に発表した就労許可証(Employment Pass、以下「EP」)取得手続き上の新しい規制(Fair Consideration Framework: FCF)は、EP申請手続きに大きな影響があります。
2014年8月1日以降にEP申請を行おうとする事業者は、原則、シンガポール労働開発局 (WDA)によって運営される予定の「人材バンク」に求人の広告をしなければ、EP申請をすることができません。例外規定として、25人以下の従業員を保有する小規模事業者及び月次固定給与が12,000ドル以上の職位については、人材バンクへの求人広告が免除ざれますが、国籍での差別や不平等な人事制度に関して苦情の申し立てがあった場合には、それらの事業者はMOMによる追加的な調査を受けたり、EP特権のはく奪等の不利益を被る可能性があります。
シンガポール市民、特に若い学業修了者と専門性を有する者、マネージャー及び上級管理者(PME)に対し、公平な雇用機会を与えるよう事業者を促そうとする今回の新規則ですが、事業者には、雇用時のみならず、雇用後のキャリア開発時においても、シンガポール市民に対する公平な配慮が要求されます。
2013/12/08 法人所得税申告期限
いよいよYA2013の法人所得税申告も大詰めを迎え、来週12月15日の電子申告期限(FORM C-S)まで、1週間を残すのみとなりました。
今年も各種の優遇税制の新設や改正点があり、クライアントの皆様もタックスメリットを逃さないために、多くの時間を費やしてきました。
特に、
などは、納税額に与える影響が大きいため、事前・事後の十分な検討が欠かせません。
ラストミニッツではありますが、申告書提出前の再確認をお勧めします。
2013/11/28 居住用不動産の固定資産税・累進税率の低下
2013年予算において発表されたように、2014年の固定資産税から、所有者居住住宅(Owner-occupied home)に係る固定資産税率が低くなります。
税率低下のメリットは、すべての所有者居住HDBと75%の所有者居住プライベートホームが対象となると見込まれ、所有者居住住宅に対する新累進税率は、来年、2014年1月1日から適用となります。
この新しい税率構造により、従来は不動産の年間価値(Annual Value: AV)の免税点が$6,000でしたが、これが$8,000まで引き上げられます。この結果、自身が所有する不動産に居住する者は、その不動産の年間価値(AV)の最初の8,000ドルまでは課税を受けないことになります。
2013/11/14 コーポレート・サービス・プロバイダー規制強化
先週木曜日、11月7日にMOFとACRAの共同で発表されたコーポレート・サービス・プロバイダー(Crporate Service Providers: CSPs)の規制強化は、マネーロンダリングとテロ活動資金を取り締まることを主目的としています。
この規制強化は、シンガポールが加盟するFATF(金融活動作業部会:1989年にフランスで開催されたアルシュ・サミットの経済宣言を受けて設立され、日本をはじめ34の国と地域がメンバーとなっています)の勧告に沿うものであり、影響を受ける分野としては、
となっています。
これらの関連活動はシンガポールの商慣行に広く浸透しているものが多く、弊社のサービスラインも含まれていますので、今後の当局の具体的指針に留意していきたいと思います。
2013/11/05 国外財産調書制度(日本)
いよいよ今年度から始まる国外財産調書制度ですが、準備状況はいかがでしょうか。
年末時点において5,000万円超の財産を国外に有する場合には、財産の種類、価額その他、一定の財産状況を記載した調書を、納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。提出義務を怠るとペナルティ-が課されますので、巷で耳にする機会も多くなっているのではないでしょうか。
ただ改めて留意すべき点は、提出義務があるのは、日本の「税務上の居住者」に限られることです。税務上の非居住者の方々は対象外とされていますが、”つい、うっかり”提出してしまう可能性もありそうですので、ご注意ください。
2013/11/02 外国法人規制の強化 2013年会社法改正案
10月23日にMOFとACRAが出した会社法改正案に対するパブリックコメントを求める発表の中に、外国法人のコンプライアンス規制の強化が強調されています。
シンガポール国内での経済活動に実態がない場合や、取締役やカンパニーセクレタリーがその義務を履行していないような外国法人の登録を制限しようとするもので、
1.外国法人が作成する財務諸表の継続的な公開と説明責任の強化
2.外国法人登録の抹消手続きの新設
を主要なポイントとしています。
登録抹消に係る当局の権限強化も併せて盛り込まれており、施行が予定される来年度以降、シンガポールからの強制的な撤退を強いられる外国法人も出てきそうです。
2013/10/24 生産性向上促進税制の日星比較
10月1日付で日本政府与党が発表した民間投資活性化等のための税制改正大綱(以下、「大綱」)に、「生産性向上設備投資促進税制」の創設が盛り込まれているので、試みにシンガポールの対応する制度であるPICスキームと比較してみます。
<日本:生産性促進税制> <シンガポール:PIC>
対象法人: 青色申告法人に限定 限定なし
対象設備: 機械等に限定 機械等+教育訓練費+R&D+知財も対象
償却特例: 50%の早期(特別?)償却 100%即時償却+300%特別償却
特例期間: 3年 5年
税額控除/補助金: 本税の20%まで税額控除 S$60,000(約480万円)まで補助金
最低取得価額要件:機械装置1台160万円以上 なし
大分違いました。
2013/10/22 GST、2013年度改正案の発表
シンガポール財務省(MOF)は、10月21日付でGSTの2013年度改正案を発表しました。
この8月25日までに寄せられたパブリックコメントに対するMOFの判断を纏める形で公表されています。改正案の中に、1) シンガポール国内の代理人を通じて、海外からシンガポールへ物品の輸入を行う場合に生じる輸入GSTの申告・納税義務の強化と、2) 旅行者還付制度(TRS)の不正請求の罰則強化があります。いずれもシンガポール国外の対象者が関係する取引上において発生するGSTについて、従来課税漏れや脱税が生じていた箇所に対する手当という点で一致しています。
11月中にはIRASからガイドラインが出されるようですので、また詳しくご案内いたします。
2013/10/16 低税率を支える健全財政方針
リー・クアンユー、ゴー・チョクトンと、歴代首相が堅持したシンガポールの健全財政政策は、この国の低率な税制を可能にしました。
先日行われたシンガポール公認会計士協会の会議において、シンガポール金融・運輸省のJosephine Teo上級相はこの国の健全財政政策を改めて評価し、財政支出が公債等の借入に依拠することなく運営されており、公債は年金基金と国内債券市場の2つのマーケット育成のためだけに発行され、この2つの市場から得られるリターンで債務返済費用は十分に賄うことができているとしています。また、国の資産は経常的に負債を超過し、純資産からは毎年S$8B(6,400億円)前後の収入が国家予算にもたらされているとのことです。
16兆ドル(1600兆円)の負債を抱えて喘ぐUSのみならず、日本にとっても、見習うべき点は多いはずです。
2013/10/11 コンプライアンス重点項目
IRASは、継続中のコンプライアンス重点チェック項目をアナウンスしています。
新規設立法人に対する免税措置を悪用した脱税が目立つことから、重点項目の一つに挙げて調査が行われ、2013年3月の時点で、税務調査対象の94法人につき、追徴された本税額でS$1.01M(約80百万円)、ペナルティーもS$0.9M(72百万円)に上っています。
その他の重点項目としては、PICスキームの内、補助金制度(キャシュペイアウト)の不正利用や、不動産開発事業上の関連者間取引価格、軽減税率適用取引時のコストアロケーション等が挙げられ、今後も引き続き税務調査に力をいれていくとしています。
新規設立法人の免税措置やPICスキームは適用事例が多いため、不注意の適応誤りも少なくありません。IRASの税務調査は、一段と厳しくなってきています。
2013/10/07 リー首相、APECでアメリカの不参加に懸念を表明
「USは重要な役割を担っており、引き続きこのアジア地域の安定に寄与すべき存在でり、他のどの国も、どの強大な力も、USに取って代わることはできない。」シンガポールのリー・シェン・ロン首相は、昨日インドネシアのバリで開催したAPEC(アジア・太平洋経済協力)首脳会議において、アメリカのオバマ大統領の直前のAPEC欠席に言及しました。債務限度法案がオバマ大統領の出席を不可能にしたことに理解を示しながらも、「ホスト国となったASEAN諸国に大きな失望を与えた」とし、今後アメリカ経済の長期的成長に与える影響にも懸念を表明しています。
但し、アメリカは今後20年変わらず大きな影響力を持ち続けるであろうし、その地位は中国にも日本にも担えるものではないとしています。
特に中国の経済政策を意識した発言ですが、シンガポールにとっても、中国主導の世界経済体制には大きな懸念をもっていることを明確にしています。
2013/10/06 嫡出子規定の相続適用
9月4日に最高裁が出した民法900条第4号但書きの違憲判決を受けて、国税庁は相続税の課税関係に与える影響を発表しています。
1. 平成25年9月4日以前に相続税額が確定している場合
嫡出に関する従来規定を適用した相続分に基づき税額を計算している場合には、相続税の是正はできない(従来規定を適用した相続分に基づいて相続税額の計算をしているのみでは、更正の請求事由に当たらない)。
2. 平成25年9月5日以後に相続が確定する場合
(1)平成25年9月5日以前に確定していた相続税額が、更正の請求等により異動する場合
(2)平成25年9月5日以後に新たに相続税額が確定する場合
嫡出に関する規定がないものとして民法第900条第4号の規定を適用した相続分に基づいて、決定に係る相続税額を計算する。
2013/10/01 自己株式買取規制の緩和
シンガポール財務省(Ministry of Finance: 以下「MOF」)は、昨日、会社法が定める10%の自己株買取規制枠を緩和し、20%まで認めると発表しました。
これにより、シンガポール法人は自己株式の取得に関してより柔軟性を有することとなります。MOFは、今回の規制緩和は、アメリカやイギリス、カナダ、香港等、株式取得に関して規制を設けていない国々の制度に近づくものであると説明しています。同時に、規制緩和はされたものの、株主総会の承認や会社債権者の利益保護、関係するディスクロージャー及びソルベンシーテストの充足等、自己株取得のために満たさなければならない諸要件には変更がないことも付け加えられています。
シンガポール証券取引所(SGX)に上場する法人については証取法改正後の適用となりますが、他の一般法人については、本日(2013年10月1日)以後適用可能です。
2013/09/23 PICスキーム、初の脱税告発
IRASは9月19日、PICスキームを利用した脱税容疑で、コンピュータ卸売業の代表取締役が8週間収監されることを発表しました。
実名が公表されたその経営者の容疑は、PICスキームの内、Cash Payout (支出補助金)の適格条件を満たさないにも関わらず、不正に申請し、S$58143.60(約460万円)の補助金をだまし取ったものとされています。PICスキームを利用した脱税行為としては、初の刑事事件であり、この34歳の経営者は、刑事罰としてS$232,574.40(1,860万円)のペナルティーが課されます。実に不正入手した補助金の4倍に相当し、さらに罰金としてS$10,000(約80万円)を納付しなければなりません。
低税率で知られるシンガポールですが、脱税に関する罰則は日本に比べはるかに厳しいものとなります。
2013/09/17 税金の精算:タックス・クリアランス
税金の精算、タックス・クリアランス(T/C)は雇用者の義務です。
シンガポール市民でない従業員が、1) シンガポール国内での雇用契約を終了する場合、又は2) シンガポールから3ヶ月以上の期間離れる場合には、その従業員に係る個人所得税その他すべての税金を精算する必要があります。このT/Cの義務は雇用者に課され、雇用者はその責任においてIRASに通知し、以下に該当する外国人被雇用者に対するT/Cを請求する必要があります。
雇用者は、雇用契約終了の日等の少なくとも1ヶ月以上前にIRASに通知し、T/Cを請求しなければならず、1ヶ月以上前の通知が困難な場合には、FormIR21にその理由を付記する必要があります。ただ、当局がその理由を相当と認めない場合には、最高S$1,000が罰金として科されます。
関連する問い合わせがあったので改めて確認してみました。帰任手続きのチェックリストに、忘れずに入れておきたい項目です。
2013/09/15 税金滞納額の減少
IRASの発表によると、税金の滞納割合は過去”最低”となりました。
課税総額に対して0.79%という記録を達成した模様で、滞納額の総額は昨年度のS$484M(約385億円)から38%以上も下落し、S$374M(299億円)となり、納税者の90%が期限内申告を完了しています(2013年3月31日現在)。この好結果を生みだした要因としては、1) Form C-Sによる申告書式の簡便化と、 2)中小企業者の96%が便益を享受できるPICスキームの導入されたことにあるようです。
税収も前年比7.6%の上昇になったことと、1ドルあたりの「徴税コスト」が0.79セントと効率的であることも発表内容に付け加えられています。
2013/09/04 非嫡出子の相続分に最高裁違憲判決
本日、最高裁判所大法廷は、民法(900条4号但書前段)が定める「非嫡出子の法定相続分は実子(嫡出子)の半分」とする規定を違憲と判事しました。
これまで幾度も合憲性が争われてきましたが、今後必要な法改正等の手続を経た後施行さることになり、遡及効の範囲も含め、大きな議論を呼ぶことになるでしょう。
相続プランの根本的な見直しが必要になるケースも多いと思われます。
2013/09/01 GSTコンプライアンス強化のプログラム
GST(消費税)申告手続きに関して、GST登録企業の自主的なコンプライアンス強化姿勢を支援するためとして、コンプライアンス保証プログラム:Assisted Compliance Assurance Programme:以下、「ACAP」)が2011年に導入されていますが、2013年8月30日付けで、このACAPの改定版(Third Edition)が発表されました。
ACAPの主要な目的は、リスクコントロールアプローチの手法を用いてGST申告に関係する全体的なプロセスを管理し、内部統制にErrorの予防と発見に有効な手続きを導入しようとするものです。
IRASはACAP導入企業に対して、5年のACAPプレミアム等を与えるとしており、そのプレミアムの中身は、
となっています。
2013/08/20 新築住宅販売数の大幅減
シンガポール都市再開発機構(Urban Redevelopment Authority: URA)の発表によれば、7月度の新築住宅の販売数は、6月度と比較して73%も減少したようです。
不動産専門家は、この大幅な販売数減少は一連の不動産投資抑制策が複合的に影響しており、中でも、総ローン額比率(Total Debt Servicing Ratio)の厳格化と不動産価値連動貸付制限(Loan to Value Limit)の制限強化の2つが大きな要因となっていると分析しています。
しかし、依然不動産価格は高止まりで推移しているようで、北部Woodlandsでも新築プライベートホームの中心価格はS$734psf をつけており、1㎡あたり約S$6,116となります。
居住用不動産価格は、投資目的はもちろん、事業活動にも大きな影響を及ぼすことから、今後の動向に注目していきたいと思います。
2013/08/19 物流事業におけるGST支払免除の措置
Major Exporter Scheme(以下、「MES」)認定業者となると、輸入時のGSTの支払いが免除されます。
これは、国際取引の中継地としてシンガポールの活用を促進するため設けられた制度であり、シンガポールで国際間貿易をする企業が、その輸入取引時に徴収されるはずのGSTについて、所定の要件を満たすことで免除されることから、GST支払いのための現金調達に係る負担を軽減することができます。
MES認定業者となるためには、GST登録業者であることはもちろん、自己取引、輸出免税50%超又は年間輸出免税取引額$10M超、内部統制・会計記録の保持、等々、多くの要件を満たす必要がありますが、いったん認定を受けることができれば、取引価格に対する7%というGSTの現金調達が不要となることから、企業のキャッシュフローに大きな影響がでます。
貨物の積み替え基地や保管・中継基地としての利用の多いシンガポールですので、該当するビジネスをされる企業にとっては、大きなメリットとなるはずです。
2013/08/12 PIC-キャッシュペイアウト
適用3年目を迎えるPICスキームですが、補助金として現金が給付されるキャッシュペイアウト(Cash Payout Option, 以下「CPO」)の換金率が倍増します。
YA2012まで30%でしたが、YA2013からYA2015までは60%となることから、換金限度額の$100,000を支出した場合、$60,000が現金で補助され、さらにこの補助金は税務上の所得加算も必要ありません。当該CPOの適用上の留意点は、最低雇用数である3人以上のシンガポール市民又はPR保有者の中に、法人株主となっている取締役は含めることができないことがあげられます。
申請上誤りが多いポイントとしてIRASが指摘する「ローカル3人縛り」は、PIC Bonusの適用上も同様にクリアする必要があります。
2013/08/08 2年目のFORM C-S
YA2012より導入されたFORM C-Sですが、さらに普及が進む見込みです。
わずか3ページに集約される申告書は、適用要件、税務調整、財務状況に関する情報を記入することで完成し、さらに電子申告を併用することで、申告期限の延長と財務諸表や税額計算書等の添付資料の送付に掛かる作業負担を省くことが可能となります。繰戻還付やグループ法人税制、外国税額控除等、FORM C-Sでは反映できない一定の申告控除項目がないのであれば、「FORM C-S+電子申告」で事務負担削減のメリットをとられることをお勧めします。
YA2012にFORM C-Sで申告書を提出した納税者については、仮にYA2013の収益が$1Mを超過したとしても継続してFORM C-Sを利用することができるということも発表されています。
2013/08/07 生産性向上キャンペーン
ここ数年、シンガポール政府が掲げるコンセプトは”生産性(Productivity)"になっています。
内外経済環境が大きく変化する中で、シンガポールが更なる発展を遂げるためには、すべての局面で生産性を改善し、国際競争力を強化する必要があると呼びかけています。特に、もっとも生産効率が低いとされる建設業界に対しては、財務省(MOF)が主導して、新しい建設技術の導入とシンガポール市民の活用の2つの目標を同時に、かつ早期に達成するべく取り組みが行われています。
技術革新の導入とシンガポール市民の積極活用により生じるコストの増加という痛み(Pain)に対して、政府は、様々な補助金(Gain)を用意してサポートすると約束しています。
2013/08/06 土地の有効利用に対するインセンティブ
Land Intensification Allowance(LIA)というタックス・インセンティブがあります。
都市再生機構(URA)が定める区域に一定の産業用建物を取得等する場合、建築費用等を支出が税務上のキャピタルアローワンスとして認められるものです。LIAのインセンティブを活用したい建物所有者は、事前にEDB(経済開発局)に適用申請をし許可を受ける必要があります。また、EDBからの申請を受けた後も、建築物に係る事業の利益率が一定の基準(Gross Profit Ratio)を超えていなければならないなど、満たすべき要件は少なくありません。但し、当該要件をクリアできれば、通常は認められない建物取得費用の所得控除が可能となることから、法人所得税の納税額に与える影響は非常に大きなものがあります。
土地をできるだけ有効に活用したいというのは、国土の限られたシンガポール当局の基本方針です。建物や構築物への投資の際には、是非ご検討ください。
2013/08/05 外国人労働力規制と給与増加額の助成
2013年度予算で導入された給与助成制度(Wage Credit Scheme、以下「WCS」)は、シンガポール政府の重要方針に整合しています。
隣国マレーシアをはじめ、近隣諸国からの低コストの労働力を活用して発展してきたシンガポールですが、労働市場の競争激化によるシンガポール市民の不利益が問題化したため、本年から低賃金外国人労働者を中心に厳しい流入規制を設定しました。WCSは、当該規制の結果として生じる市民の積極活用による労働コストの上昇分を、政府の補助金により助成しようとするものです。したがって、助成対象となるのは、
等の条件を満たすことが必要となります。
2013/07/12 老年者扶養控除のシェアリング
シンガポールも高齢化が進んでいます。
1969年に導入された「2人まで政策("Stop at two" policy)」の効果は高く、それまで”平均6人”であった成人女性の出産数を大きく減少させました。当然のこととして女性の高学歴化及び社会進出が進み、2030年までには5人に1人が65歳以上の高齢者になると見込まれていますが、この高齢化の進展が、税制上の老年者扶養控除制度のありかたに問題を投げかけています。現行制度では、扶養控除を申告できるのは、「老年者一人当たり一人の納税者」となっており、複数の納税者間で”扶養控除をシェア”することはできませんが、IRASは先日、高まるニーズに応えるため、扶養控除のシェアリングについてのパブリックコメントを求める文書を発表しています。
日本も長く同様の問題を抱えていますので、シンガポールがどのような解決策を生み出すのか、注目されます。
2013/07/04 費用負担契約締結時のPIC Bonusの活用
YA2013からYA2015までの3年間で適用可能なPIC Bonusですが、グループ企業間で費用負担契約を結んでいる際の適用関係に注意が必要です。
これは、従業員と直接雇用契約を結んでいる法人(法人A)と、実際に従業員が労働を提供している法人(法人B)が異なる場合には、原則として法人Bの申告上でPIC Bonusを受け取ることができるとされているためです。グループ企業内の人材管理会社が、各グループ企業へ人材を配置しているような場合には、配属先の企業の「PIC適格活動」上で消費された「適格PIC支出」を算定して申告する必要が出てきます。
適用要件を正しく認識して、十分なメリットを享受したいところです。
2013/06/26 ストックオプションの税務
シンガポール所得税法上も、ストックオプション(SO)に関して、法人課税と個人課税それぞれについて細かく規定されています。
法人課税について、SOの発行費用が原則として権利行使時(買戻し時)まで損金算入が認められないのは日本の制度と同様です。また、個人課税の面でも、一定の要件の下、権利行使時まで課税が繰り延べられるところなど大きな差異はありません。ただし、駐在員等で赴任中に付与されたSOについて、権利行使をしないまま本国へ帰国する場合等については、「みなし権利行使」として帰国前までに課税所得の認定と申告義務が発生しますので注意が必要です。
SOに関する申告漏れが無いよう、事前に手続き書等を準備されることをお勧めします。
2013/06/17 脱税のペナルティーと実名の公表
シンガポールの低い税率構造は、厳しいペナルティー制度によって支えられていると言うこともできます。
6月14日付けで、法人所得税とGST脱税の罪により、総額SGD2.3M(1.8億円)支払いを命じられた会社役員が実名でIRASのウェブサイトに公表されました。この支払額の内、納税不足額にあたる本税額はSGD0.6M(48百万円)だけであり、残りのSGD1.7M(1億36百万円)はすべてペナルティーとなっていますので、本税に対して約300%の"制裁"が課されたことになります。さらに、実名と"罪状"も公にされていることから、今回の違反者のビジネスの継続性に大きな影響を与えることでしょう。
納税漏れが招く壊滅的なレピュテーションリスクは、シンガポールでビジネスするすべての企業にとって最重要の検討事項の一つと言えます。
2013/06/11 適格R&Rコストの控除限度額の拡大
2013年6月6日付けで、IRASは適格R&Rコストの控除限度額を大幅に拡大することを発表しています。
従来の限度額である$150,000を倍増させて、年間$300,000までの適格支出について課税所得から控除することが可能になります。
適格支出に該当しないものとしては、
があり、控除対象となりませんので注意が必要です。
適用はYA2013年からとされていますので、2012年会計事業年度の申告の際に適用可能です。
2013/06/01 国外源泉所得免税の留意点
シンガポールでは2003年6月から国外所得免税税制(FSIE Scheme)が導入されており、シンガポールの税務上の居住者(個人及び法人)は、一定の要件を満たす場合に、シンガポール国外に発生源泉がある下記の所得について免税措置を受けることができます。
上記配当所得については、持株要件の制限なしに免税措置が受けることができますが、国外支店利益につては、通常の事業活動から生じた利益のみが免税の対象で、非事業活動の所得については免税対象に含まれないことに注意する必要があります。さらに、国外提供サービスへの免税措置にも制限があり、支店自身が国外に有する恒久的施設等「一定の所在地」を介して提供されたサービスに対する収入のみが免税対象となり、「一時的・準備的」所在地は「一定の所在地」には該当しないとされます。
その他、所得の送金手続きや15%税率要件についても、免税メリットを受ける際に検討を要する細かな点が少なくありませんのでご留意ください。
2013/05/27 PIC申告手続き上の”コモン・ミステイク”
昨年から導入されたPICスキームは多くの企業に活用されており、特に中小企業(SMEs)に対するメリットが大きいため、申告件数もかなりの数になっているようです。
ただ、自身で申告する場合及びコンサルタントに依頼して申告する場合に係らず、共通してみられる手続き上のミスも多いため、IRASは、以下のような”コモン・ミステイク”の事例を挙げて注意を呼びかけています。
申請する適格支出件数が多い場合などは、集計作業時に判断ミス等が発生しやすいです。社内で共有できる判断基準書やフローチャートを準備すると、効率のよい申告手続きになると思います。
2013/05/15 国際税務行政協力の強化
IRASは、クロスボーダーで行われる脱税行為に対する国際協力を強化しています。
主要国の税務長官が出席して行われる「租税に関する透明性と情報交換に関する世界会議(以下”世界会議”)」において、シンガポールの情報交換規定に関する取り組みは世界基準に準拠したものとして評価されましたが、さらに以下の4つのステップを導入して情報交換制度の強化を図ることが明らかにされています。
世界的な税務競争の中で、一層のコンプライアンス強化策の導入となります。
2013/05/09 GSTコンプライアンス・コストの支援制度
IRASは、GST登録業者のコンプライアンス手続きをサポートするため、GSTの計算から申告に至る内部統制手続の整備を支援する制度を持っています。
ACAP(Assisted Compliance Assurance Program)とASK(Assisted Self-help Kit)の2種類があり、ACAPに申し込みをしたGST課税業者は、3年から5年間の税務調査免除や早期還付制度等の特典が与えられる他、外部コンサルタントに依頼する内部統制整備状況の評価費用の50%の補助を受けることができます。
また、GST課税業者のすべてが利用できるASKでは、GST手続きをセルフチェックできるパッケージを提供しており、申告内容の正確性を確認でき、また過年度の申告上のミスについて自主的修正申告プログラムの適用が可能です。
事務負担が重いGSTの申告・納税手続きには、ミスが避けられない場合も多々あります。当局の支援制度を上手に活用することをお勧めします。
2013/05/06 マレーシア総選挙
昨日5月5日に行われた第13回マレーシア下院の総選挙は、マレー国民組織(UMNO)を中心とする与党連合・国民戦線(BN)が、野党・人民連合(PR)を抑え勝利しました。
接戦が予想された今回の選挙も与党側が6割の議席を獲得し、安定多数を確保しました。今回の結果は、1957年の独立以来、高い経済成長を継続してきた現政権の実績が評価されたと言え、マレーシア国民の多くが、今後もブミプトラ(マレー人及び先住民族の総称)優先主義の継続を希望しているということを示しています。
ただ、選挙戦前の「接戦予想」にみられるように、不平等を訴える華人コミュニティーのプレゼンスが着実に高まっていることも事実であり、今後の政権運営上での変化が注目されるところです。
2013/05/04 RCEPの交渉開始
RCEP (東アジア地域包括的経済連携)の第1回交渉が、来る5月9日から13日までブルネイにて行われます。
昨年11月にプノンペンで宣言された通り、ASEAN10ヶ国とFTA締結東アジア諸国6ヶ国との間での包括的な経済パートナーシップの締結に向けた交渉がスタートし、RCEPの合意が実現すると、人口30億人超(世界人口の半分以上)、GDPでUS19.78兆ドル(世界GDP総額の3分の1)という最大規模の地域間協定誕生となり、世界の貿易と投資に大きな貢献をするものとなることは間違いないとみられています。
最終的な合意までの期限は「2015年中」と設定されていますが、その交渉過程のモニタリングを欠かさずに、合意内容が自社のビジネスに与える影響に関する情報を十分に収集・分析する必要があります。
(出典:ASEANホームページ)
2013/04/30 株式連動報酬税制の廃止
IRASは4月26日、株価等、業績指数連動型の報酬制度であるESOPスキーム等に対して与えていた部分免税措置の廃止を発表しました。
従来、Equity Remuneration Incentive Scheme("ERIS")の中に3つのカテゴリーを設け、従業員が行う「税制適格」な自社株式売却権の権利行使によるキャピタルゲインに対して、それぞれ一定の限度額内で75%、50%、25%の部分免税としていました。今回、適用対象となる株式の付与期限を本年末まで(一部本年2月15日まで)と制限することで、来年度以降等に付与される株式連動型報酬については部分免税のメリットを享受できなくなります。
労働サービス提供対価について、支払形態の違いにより課税上の差異を設けていた従来の取扱いを見直すこととなる改正ですが、「所得税徴収強化」という新しい政府方針に従い、「タックス・インセンティブの合理化」が始まったと言えます。
2013/04/21 日本の不動産投資への機運再燃
円安の進行による割安感から、日本の不動産価額及び不動産関連株式価額の上昇が顕著です。
アベノミクス前の円高を利用して外国為替や外国株式に当てられていた国内投資家の金融資産のUターンもありますが、それ以上に外国人投資家の日本の不動産投資への関心が高まっているようです。先日も、冷えこんでいたTMK・匿名組合スキーム等導管体の利用を検討する外国人投資家からの問い合わせがありましたが、租税条約のメリットと日本の国内法の特例を最大限に活用し、タックスベネフィットの最適化を図る必要があります。
2013/04/20 日本の2013年経済見通し
IMFのレポートでも日本の経済状況は好評価を受けています。
「2013年世界経済見通し」の中の日本についての言及として、「新政府により導入された積極的金融緩和、インフレターゲット、財政刺激や構造改革等の諸策によって、ゆっくりとではあるが着実に前進し("Japan is forging a pathe of its own.")ており、短期間の内にその成果が見えるであろう」とされています。ただ、懸念材料として、GDP比214%を超える「巨額の政府債務残高に対する中期的財政再建策がないことがリスクになりうる」との指摘もされています。機関投資家は当然リスクに見合った”プレミアム”を要求するため、「債務の持続可能性を損ねる危険に注意する必要がある」と締めくくられています。
2013/04/19 低成長の中での所得税累進構造の見直し
IMFが16日に発表した世界経済見通し(World Economic Outlook:WEO)によれば、シンガポール経済の2013年実質GDP成長率は2.0%に留まると予想されています。
他のASEAN主要国が5%から6%の成長を確保する中で、成熟期を迎えたシンガポール経済の成長力の低下を読み取ることができ、この点についてシンガポール政府はその2013年度予算の中で、「今後ますます進行する低成長経済下でいかにシンガポール国民が豊かな生活を継続・発展させていくことができるのかという大きなチャレンジに直面している」という認識を示しています。具体的な対応策として所得税の累進構造を見直し、税率引き上げを含む所得再分配機能の強化が計画されています。
給与所得者の55%以上が所得税の納税をしていないというシンガポールの現状に変化が訪れるのは、間もなくのようです。
2013/04/17 低所得者への所得補助金制度の強化
先月発表された2013年度予算には、低所得者に対する補助金制度(Workfare Income Supplement Scheme: WIS)の拡充が強調されています。
主な改正点は、
”ネガティブ(納付ではなく受給されるという意味で)な個人所得税”とも言われるWISスキームですが、補助金の増加分を担保する財源は、外国人雇用税の強化による増税分を当てるとしており、シンガポール市民の積極雇用を図る狙いがあります。
依然として供給不足による賃金上昇圧力が続くシンガポール労働市場での今回の改正は、更なる賃金上昇を招き、企業収益を圧迫する要因となりますが、その悪影響はPICスキームや所得税の割戻し(Income Tax Rebate)で十分に相殺しうるとシンガポール政府は見込んでいます。
2013/04/11 国境検問所でのGST還付案を断念
IRASにおいて、海外からの旅行者に対しチャンギ国際空港等で消費税を還付する制度(Tourist Refund Scheme:TRS)の適用を拡大する特例案が検討されていましが、結果、断念したことを発表しています。
検討されていたのは、隣国マレーシアとの境にある「国境検問所」でのTRSの適用によりGSTの還付を可能にしようとするものでした。しかし、消費税還付適用後の不正な持ち込みによる”ラウンド・トリッピング”の大きな影響が懸念されるため、TRS制度の国境検問所での適用を見送ったと説明されています。
日々国境検問所を通過する交通量の激しさを考慮すると、制度の悪用による影響を見逃すわけにはいかないようです。
2013/04/08 移転価格課税の対応にみるIRASの国際化推進支援
シンガポール法人の国際化を推進しようとする政府の態度は、課税庁であるIRASの税務行政にも表れています。
4月2日に行われた税務アカデミー主催の会議で、国務大臣の一人であるMrs. Josephine Teoは、IRASが行う移転価格リスク解決のための制度の積極的な利用を呼びかけました。2006年に移転価格ガイドラインが設定されて以来、10件の移転価格紛争事案を相互協議で解決し、27のバイラテラルの事前確認制度(APA)の締結を行い、企業の国際取引のサポートに注力しているとしています。
過去10年間でシンガポール企業の対外直接投資残高が4倍を超えたことからも明らかなように、多国間貿易を行う企業の移転価格リスクを低減させることは、貿易立国であるシンガポールの競争力維持のために欠かせない重要な要素になっています。
2013/03/26 2013年予算のメッセージ
3月8日にアナウンスされたシンガポール2013年度予算には、重要なメッセージがあります。
これまで外国人からの投資や労働力に大きく依存して発展してきた同国にとって、大きな転換点を迎えているとの認識のもと、”Quality Growth""Inclusive Society"と言う2つの標語に託した諸政策の実行を約束しています。外国人労働力規制強化によるシンガポール人の雇用促進と所得の増加と図り、低成長時代にも持続可能な高付加価値社会を創造するとしています。個別政策としては、WCSや$40,000CPF助成金等を通じて中低所得者層の雇用と持ち家率を向上させて所得の増加・安定を可能にし、PICや30%法人税リベート等により企業の生産性向上を実現させるとしています。また、近い将来の所得税の累進構造の見直しと所得再分配機能の強化も示唆しています。
日本人を含む外国人にとっては労働環境の悪化と映る諸政策ですが、シンガポール人の社会福祉増進という最優先事項の達成を誓うシンガポール政府の判断は、正しいと思います。
2013/03/20 役員報酬・従業員賞与の所得控除の取り扱いの改定(重要)
従来のルール(1993年に制定された規定)において不明確であるとの批判のあった一部の役員報酬等に掛かる取り扱いについて、去る3月8日に不明確な点を除去する新規定がアナウンスされています。
当該改定により明確となった点として、
税務上「損金算入」が可能かどうかの判断がより明確になったことにともない、判断基準を満たさない場合の否認リスクが高まったとも言えます。十分な対処が必要ですのでご留意ください。
2013/03/18 雇用促進のための時限措置
シンガポール共和国2013年度予算において、臨時的な雇用促進制度が手当てされることになりました。
Wage Credit Scheme(WCS)と命名されたこの制度は、シンガポール人労働者に係る給与支給増加額の40%に対して政府の補助金が受けられるもので、適用期間はYA 2013からYA2015までの3年間です。
1. 制度概要
2. 適用対象労働者
適用対象となる労働者は、以下の要件の全てを満たす必要がある。
詳しい内容については、お問い合わせください。
(2字訂正 20/06/2013)
2013/03/04 PICスキームの強化策の導入
シンガポール共和国2013年度予算で、PICボーナス(PIC Bonus)という追加の税制優遇策の導入が発表されています。
従来のPICスキームでは、適格活動支出に対する(1)400%所得控除又は(2)30%/60%の補助金のいずれかの選択となっていましたが、この2つの基本オプションのいずれにも加えることができるものとして、最大15000ドルの補助金が設定されました(以下、基本オプションとPIC Bonusの組み合わせ)。
(1) 400%所得控除 + $15,000補助金(PIC Bonus)
(2) 30%・60%補助金+ $15,000補助金 (PIC Bonus)
発展が進むASEAN・アジア圏で、継続的な技術革新によって競争力を維持・強化するんだというシンガポール政府の意思は明確です。
2013/02/12 No Filing Service (NFS)の利用
本年度の申告から導入された申告書提出不要制度(No-Filing Service: NFS)について再度ご案内します。
給与所得者等、雇用者が給与データをIRASに電子送信するAuto-Inclusion Scheme制度を利用している場合で、給与所得以外の申告内容に変化がないときは、被雇用者である納税者が個人所得税の申告書(Form C)を提出する必要がありません。
具体的要件は、
所得税申告の作業負担を大幅に軽減するものですので、是非ご検討ください。
2013/02/08 海運業のGSTコンプライアンスの緩和措置
1月28日、IRASは海運業に与える一定のGSTゼロ税率課税について、その優遇を受ける条件である手続きの追加緩和措置を発表しました。
概要は、
であり、具体例の一つとして、
従来対象サービスは「船舶上」で行う修繕・維持活動に限定とされていたものが、シンガポール国内にある「造船所」でなされた修繕・維持サービスについても対象に含めるものとして拡大されたことが挙げられます。
「アベノミクス」のインフレ目標・円安誘導政策により株価の上昇が著しい日本の海運業界ですが、取引量の増加に比例して自身が保有する船舶や顧客の船舶の修繕費用は増加するため、当該制度の利用価値は高いと思われます。
2013/02/04 タックスシーズン到来
いよいよ個人所得税の申告時期となり、IRASがアナウンスする内容も申告作業をサポートする制度や減税効果のある特例措置についてのガイダンスが多くなっています。特に、事業所得を有する個人にとってのPICスキームは
ファイナンス基盤の弱い中小事業者にとってメリットが大きいため、無料のPICセミナーを随時開催して納税者の利用を呼びかけています。また、給与所得のみの個人に対しても電子申告(e-filing)や振替納税(JIRO)を宣伝して、申告期限の延長や無利息の分割納税の利用を促しています。
ついつい期限ぎりぎりまで延ばしがちな申告手続きですが、十分なタックスメリットを享受するために、早めの準備をお勧めします。
2013年1月31日 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(日本)
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についてですが、税制改正大綱によると以下のように要件等が定められています。
高齢者等が保有する財産の若年世代への移転を容易にする制度ですが、
といった部分はまだ明確になっていません。シンガポールや欧米諸国で教育を受ける者が対象となる場合には、制度設計如何により利用形態や支払う信託報酬の額などにも影響しそうです。
2013/01/30 平成25年度税制改正大綱の影響(日本)
平成25年度税制改正大綱が与党から発表されましたが、相続税における「小規模宅地等の特例」に関する緩和措置が注目されています。
相続税の基礎控除の削減や最高税率の引上げなど、基本的には「資産税課税強化」として位置づけられる一方、1)居住用宅地の適用面積を330㎡に拡大、2)事業用と居住用の適用面積の併用適用(最高730㎡)を認めるなど、不動産所有に対する減税の変更も盛り込まれています。これらの変更の意味するところは、
ことにあるように思われます。
ただ、少子高齢化の進展に歯止めがかからない日本で新規に不動産へ投資する場合には、将来の価格下落リスク等の観点から消極的にならざるを得ません。
2013/01/28 国外財産の取得に対する相続課税の強化(平成25年税制改正大綱:日本)
去る1月24日発表の平成25年度税制改正大綱で、相続税・贈与税の課税強化が鮮明になっています。
特に、国外に財産移転を加速させる富裕層の動きに対応し、相続税及び贈与税の納税義務者を拡大して、「日本国籍を有しない非居住者が相続等により国外財産を取得した場合にも課税できる」とする変更が盛り込まれました(平成25年4月1日以後の相続・贈与について適用)。施行後、財産所在地国及び日本で相続税等の二重課税が発生することが危惧されますが、現状日本が締結する租税条約で相続税の二重課税調整について明文の条約締結がある国はアメリカのみです。 また、外国税額控除での調整については、課税システムの違いに起因する調整不能額の発生も考慮する必要があります。
二重課税リスク低減のための対策を、課税当局と納税者の双方が早急に検討しなければならないと言えます。
2013/01/20 国際海運業に対するタックス・インセンティブの拡充
ディストリビューション・ハブの政策を推進するシンガポールは、「国外からシンガポールへ入港」する場合の国際海運事業所得について最大15年間の法人所得免税の機会を従来から提供しています(Approved International Sipping Scheme: AIS Award)。
加えてYA2012以降の追加措置として、「シンガポールから国外へ出航」する場合の所得についても免税とする規定を導入しました。「入港」に加えて「出航」分の所得も免税対象となることで商流の「全体」から税務コストを軽減できることになります。
但し、「入港」の場合には認められている外国為替事務やリスクマネジメント活動から生じる収益等に対する免税措置については、「出航」の場合には原則適用が無いことに留意が必要です。
また適用の際には、船舶ごと収支報告書の作成・保存やその当局への報告義務等の事務負担が発生します。
2013/01/19 平成25年度税制改正 富裕層課税の強化(日本)
17日、自民・公明・民主の3党協議が開かれ、平成25年度の税制改正の内容が合意されました。
焦点であった富裕層課税の強化は、課税所得4,000万円超の場合の所得税率が45%となり、相続税の基礎控除額は従来の控除額から4割減らし3,000万円+600万円×法定相続人の数と
する等、富裕層のフローとストックの両面で増税となります。
国会議員の定数削減や公務員改革等の財政支出健全化・効率化に目立った進展の見られない中で、個人所得課税(住民税を含む)の最高税率を55%とすることは、納税者の理解を得られない部分が大きいと思われます。
シンガポールでは、ごく少数の「スパーエリート」が管理する政府や公的機関に対する国民の批判もよく聞かれるところではありますが、日本の「大き過ぎる政府」と比較するとき、財政運営のパフォーマンスの差がそのまま両国の所得税率の差として現れてしまっているようにも思えます。
2013/01/18 PICスキームの対象となる自動化設備
YA2011からYA2015の間に一定の自動化設備等に投資をした場合には、PICスキームのタックス・ベネフィットをうけることができます。PICの対象となる設備について、産業別の事例が発表されており、
といった、各業界の使用されるであろう自動化設備が明らかにされています。また、例示されたもの以外でも、従来の設備を上回る技術的長所を有し作業効率やコスト削減に貢献する設備については申請ベースでPIC対象資産として認められますので、400%のキャピタルアローワンス等のベネフィットの機会を有効利用してください。
2013/01/17 不動産市場への追加抑制策
シンガポール政府は11日、加熱し続ける居住用不動産市場を抑制するための包括的かつ暫定的な規制の導入を発表しました。
規制の主な内容は、
上記の規制は、1軒目の居住用不動産を購入しようとする者には原則適用はありません。また、市場の状況により適時廃止されるものとしています。
その他、公団(HDB)のオーナーに対し転貸(Subletting)を制限する等の規制も導入されたため、市場に与える影響は大きいと言えます。
2013/01/16 インドネシアのフランチャイズ規制
インドネシアのフランチャイズ規制が懸念されています。
2億4千万人という世界第4位の人口を抱え大きな国内需要を有するインドネシアですが、輸入超過による貿易赤字の悪化にたいして政府が大きな問題意識を持っています。
昨年8月には、商業大臣規定2012年第53号の導入が発表され、外資のフランチャイズ展開によるインドネシア進出に対して、
といった規制を設定しました。日本から進出したコンビニ業や飲食業には、登録済みの事業内容の変更や業態の整理等が必要となるなどの影響がでています。
6%超の着実な経済成長を続け進出先としての魅力を増すインドネシアですが、関連規制の新設・変更といったコンプライアンス・リスクのモニタリングが欠かせません。
2013/01/14 国際海運業に対するGST免除の拡大
IRASは一定の国際海運取引に対してGSTの課税を免除(ZERO-Rating)制度を導入しています。
この制度はシンガポールの物流ハブとしてのプレゼンスをサポートするものであり、免税となる国際海運の定義や対象となる船舶の範囲を拡大するなどして、年々強化されています。特に、人や物品の運送サービス取引以外にも、「対象船舶の修繕・維持管理のためのサービス」や「ハンドリングサービス」についても一定の条件で免税とされる点は、営業利益に与える影響が少なくありません。
シンガポール2012年度の海運取扱量は、欧州債務危機の影響を受けたにもかかわらず初の3千万超えである3,160万TEUとなり、22億5千万トンとなった年間寄港総量とともに過去最高を記録しました。シェールガス事業関連での新規の需要も見込まれる中で、IRASの制度設計は確実にシンガポール経済に寄与しています。
出典:MPA Singapore "Singapore's 2012 Maritime Performance"
2013/01/10 登録前GST控除の活用
先月5日にご紹介しました登録前GSTの控除についてアップデートします。
GSTの登録業者となる前に支払ったGST(Input GST)を控除する特例がアナウンスされましたが、この特例を適用する上での基本的な考え方は、
「GST登録事業者となった後に発生する課税対象収益(いわゆる課税売上)に係る登録前のInput GSTが控除可能」
となります。したがって、GST登録事業者となる前に、Input GSTの発生原因となった物・サービスが事業者の収益獲得に使用・消費されてしまう場合には、Input GSTの控除が認められないというのが原則的な取扱いです。
但し、IRASは事業者のコンプライアンスコスト削減のためとして運用上の特例を設けており、一定の動産や不動産について、GST登録前に収益獲得している場合等であってもInput GSTの全部又は一部の控除を認めるとしています。
GSTの登録時や固定資産設備の取得時においては、GSTの納税額や還付額に大きな差を生じる可能がありますので、慎重な検討が必要です。
2013/01/08 海外展開を支援する緊急経済対策
新聞報道にあるとおり、日本政府は昨日緊急経済対策を発表しました。
経済成長戦略と復興・防災、地域活性化を事業の柱とする事業規模20兆円を超えるものとされ、中でも日本企業の海外展開支援が強調されています。
また、安倍首相の最初の外国訪問地にインドネシア、タイ、ベトナムの3ヶ国が選ばれる模様で、官民全体で日本のASEAN重視の姿勢が示されることになります。
ASEANで海外展開を図る企業にとっては力強い後押しとなる政策ですが、いかにその大きな波に乗っていけるのかはすべての企業の課題だと思います。
日本人の底力を見せたいですね。
2013/01/07 LLPとタックスインセンティブの活用
シンガポールにおけるLLPの定義は、LLP法に基づいて組成され法人格が与えられたパートナーシップ形態を言います。
一般のパートナーシップと同様、LLPは所得税法上の納税義務を負わず、代わりにLLPの各パートナーに個々の持分に応じた所得税等の納税義務が課せられますが、 欠損金やキャピタルアローワンスもLLPにおいて生じた収入と相殺することが可能です(Relevant deductionの制限有)。
また、シンガポールの経済ハブ化に貢献度の高い海運や空運事業者には、EDBやMAS、MAPといった監督当局が定める一定の要件を満たすことにより所得税免除の特典を享受できる税務上のインセンティブが用意されています。
多額の初期投資を要する海運・空運事業において、LLPをビークルとすることによる資金調達の迅速化と、タックスインセンティブの利用による投下資本の効率的な回収を図ることが可能となります。