2014

 

2014/12/26  シンガポール税制の転換期

 

たる2015年も、シンガポールの政策に大きな変更がありそうです。

極めて健全な均衡財政を誇るこの国も、高齢化社会の進展と生産性の低減は避けられない課題であり、持続的な発展と国民生活の安定のため、本年中にさまざまな財政政策が発表されました。中でも、駐在員等として働く外国人を主対象とした労働規制や所得税増税の諸策については、影響を受けた方も多くいるのではないでしょうか。財政収入の95%程を占める税収については、近い将来のGST税率の引上げを実施し、間接税主体の税制構造を志向してゆくことが示されています。同時に物価の過度な上昇を抑えるため、固定資産税や印紙税上で、投資用物件と非投資用物件間の差別的な取り扱いが強まってます。

 

1人当たりGDPが6万ドル目前となり、世界有数の生産性を誇るシンガポール政府が、今後どのようにこの国をドライブしていくのか注目されます。

 

最後に、本年中にお世話になりましたクライアントの皆様をはじめ、ビジネスパートナーの皆様、IRAS等政府機関の皆様、お問い合わせいただきました皆様に、あらためて感謝申し上げます。

2015年もシンガポールやASEANのコンプライアンス関連情報とサービスの提供に努めてまいりますので、ご厚誼のほど、よろしくお願いいたします。

よい年の瀬をお迎えください。

 

 

 

 

 

2014/12/18  シンガポール・インドネシア情報交換条項の合意

 

去る12月15日に行われたシンガポール・インドネシア両国の財務大臣間協議において、両国間の租税条約に国際標準の情報交換規定を盛り込み、経済交流をさらに促進させていくことで合意しました。

国際情報交換・透明性促進フォーラムのメンバーとして、シンガポールは2018年までにその自動情報交換制度(以下、AEOI)の導入を約束していますが(インドネシアは2017年までに導入予定)、その導入の前提条件として、

  • 欧米及びアジアの主要な金融センターにおいてAEOIが採用されること
  • 納税者の機密保持が確保される法整備と交換される情報が適切に利用されることの保証
  • 情報交換協定締結国との間に、確実な相互依存関係が存在すること

を挙げて、シンガポールに関係する投資家の保護が損なわれることのないように配慮するとともに、シンガポールの投資環境が一方的に低下することを拒否する姿勢を示しています。

 

まずは、先ごろ適用開始されたFATCA(国外口座コンプライアンス法)の適正運用が最優先事項となりますが、投資家情報の税務当局による国際的管理体制は今後確実に厳しくなっていきます。多国間に投資されている納税者の方々は適切な対応が求められています。

 

 

 

 

2014/12/10 シンガポール・米国 国外口座税務コンプライアンス法の両国間合意締結

 

IRASは12月9日付で、米国の国外口座税務コンプライアンス法 (以下、FATCA)に対応する両国間合意を基づき署名・締結したと発表しています。

米国法であるFATCAは、米国人の所有する金融機関口座のうち米国外に所在する口座について、その口座所有者のコンプライアンス違犯を取り締まる目的で制定されており、アメリカ国外の金融機関のすべてに、対象米国人の口座情報について定期的に報告することを要求しています。当該要求に対応しない金融機関に対しては、その金融機関の取引の内、米国から国外への送金取引につき一律30%の源泉徴収税額を課するとしていますので、ほぼすべてのシンガポールの金融機関が対応せざるを得ない状況となっていました。

今回締結された両国間合意により、対象の金融機関は、米国人口座について定期・一定の精査を実施して、精査の内容と結論についてIRASへ報告し、IRASを通じて米国の内国歳入庁(IRS)へ通知されることとなります。

 

 

 

 

 

2014/11/27  PIC キャッシュ・ペイアウトの所得控除と税効果会計への影響

 

年間最大60,000ドルの補助金が受けとれるPIC Cash-payoutの申請件数は相当な数に上っているようですが、適用対象資産の所得控除については注意が必要です。

コンピューターや固定設備等の減価償却資産については、通常、少額資産の一時償却やキャピタルアローワンスとして、法人所得税計算上、取得金額全額の所得控除を受けることができます。これに対し、Cash-payoutの対象資産として補助金による支出の補てんを受けた資産については、税務上、いかなる所得控除も認められなくなります。つまり、取得価額の全額が税務上の損金とはならないため、その分だけ課税対象所得を増加させることとなります。

また、会計上の減価償却計算等と税務上の取り扱いに差異が生じるため、税効果会計を適用する際に永久差異として認識する必要性が生じます。

 

シンガポール法人の規模によっては、税効果会計の適用を免れないけケースも出てきますので、PICの適用関係については注意が必要です。

 

 

 

 

 

2014/11/25  GSTコンプライアンスサポートのツール

 

自己申告課税であるGSTの納税額算定上のエラーを排除する目的で、IRASは納税者に対し、GST Assited Self-help Kit (ASK)というチェックシートを提供しています。

このチェックシートは、企業の内部統制の整備状況の十分性を自己確認させることを主眼としているため、申告書上の各記載項目の算出過程について、ダブルチェックの実行とと説明責任の所在を明確を促すものとなっています。

 

このASKに基づいてGSTのコンプライアンス適合状況を明示し、かつ、認定税理士等の承認を受けた事業者については、GSTの税務調査の免除や輸入GSTの納税手続きに特典が与えられますので、導入有れることをお勧めします。

 

 

 

2014/11/13  e-filingの適用法人の拡大

 

IRASは11月11日、電子申告制度(e-filing)を原則全法人に拡大すると発表しています。

 

現在の法人所得税の電子申告制度は、一定の売上要件等を満たす小規模法人にのみ認められていますが、この制限を緩和して、2015年度(YA2016)以降からすべてのシンガポール法人がe-filing利用可能となり、併せて、原則11月30日までの税務申告書(FORM C)の提出期限を、12月15日までに延長できることになるようです。FORM C-S利用法人に認められる添付資料の削減のメリットまではあたえられないいようですが、コンプライアンスコストの削減になることは間違いありません。

 

より詳しい情報については、今後のアナウンスを待ちたいと思います。

 

 

 

 

 

 

2014/11/05  2014年度所得税法改正案

 

シンガポール財務省は11月3日、所得税法の改正案を発表しています。

主な改正内容は、

  • PICスキームのYA2018までの延長と中小企業に対するPIC+スキームの導入
  • 出向社員、派遣社員に対する教育費用をPIC適格支出とすること(ホテル、飲食業界等に配慮)
  • 研究開発費用の50%特別加算償却のYA2025までの延長
  • 知的財産権に係る税務特典適用対象から、顧客リスト及び作業工程表等の文書を適用外とする

等があります。

併せて、悪用事例が多いPICのCash-payout(補助金)申請に対する審査の厳格化と摘発の徹底が強調されています。

 

さらに、海外税務当局との情報交換規定の整備も進む中、クロスボーダー取引の情報収集も強化しつつ、国際的二重課税との調整を図るとしています。

 

 

 

 

 

 

2014/10/26  GST未登録業者の不正摘発

 

IRASは10月15日、GSTの登録業者でないにもかかわらず顧客からGST名目で対価を不正に徴収し利益を得たとして、法人とその代表取締役個人に対して、総額$295K(約25百万円)の罰金を課したことを発表しています。

起訴された代表取締役である女性とその夫は、個人事業主であった2004年末から2006年7月までの数年の事業年度において、GST未登録業者であったにもかかわらずにGSTを賦課した対価を受け取っていましたが、その不正なGSTの受取額の合計額である$30,532.90に対して、3倍のペナルティーが課されました。その他、法人設立後GST未登録期間のGST不正収受についても$62,059.95の罰金が言い渡されています。さらに、不正なGST請求のために発行された118枚の請求書毎に$1,200が課されるため、その額は$141,600になるとのことです。

 

IRASはこのケースとは別件となるGSTの不正還付事件についても、起訴された4人のインド人の実名を公表し、それらが犯した脱税の詳しい手法と課された刑罰・罰金の内容を周知させています。GSTの意図的な不正はもちろんのこと不注意による納付漏れについても厳しい調査が行われていますので、該当するケースが発見された場合には、速やかに自主的に修正申告をされることをお勧めします。

 

 

 

 

2014/10/22  2014年会社法改正

 

去る10月8日、2014年の会社法改正案はシンガポール国会の審議を経て可決、成立しています。

2006年改正以来となる今回の改正案は重要な点が多く、公開会社の一株一議決権制限の廃止、非公開会社等の定款の形式の多様化、個人の登録住所地の選択制、コンプライアンス違反をした取締役・会社秘書役の罷免権のACRAへの付与等がありますが、中でも、

  • 会計監査免除対象法人の拡大
  • 外国法人の申告財務諸表範囲の拡大

は多くの日系企業に影響がでるものと思われます。

改正された財務諸表監査免除基準では、1)年間売上又は2) 総資産額がS$10M以下、3)従業員が50人以下の3要件のうち2つを満たす非公開会社は、シンガポール会計士による財務諸表監査が免除されることとなりコンプライアンスコストの大幅な軽減につながるでしょう。一方、外国法人について従来は貸借対照表のみを申告すればよかったものが、改正会社法では、内国法人と同様の財務書類の提出が義務付けられることとなったことから、事務負担増加が見込まれます。

 

いずれにしても早期に改正点を確認して、その影響を決算スケジュールに取り込むことが必要です。

 

 

 

 

2014/10/15  金融サービスの非課税措置


IRASは10月13日付で、GSTにおける金融サービス(Financial service、以下、「FS」)の非課税措置に関するガイダンスを更新しています。

GST上、第4スケジュールのPart1においてFSの原則非課税措置を規定していますが、金融機関のサービスは多様化しているため、非課税措置が適用される1)本来的なFSと2)非課税が適用されない追加付加価値サービス(additional value added services、以下、「AVAS」を区分する必要が生じます。また、各金融機関は部分非課税事業者(Parcial exemption business)に該当するため、GSTの原則上、Input Tax (いわゆる仮払消費税)の控除に際して、事務負担の大きい個別対応方式による計算が必要となります。但し、現行法下では、金融機関特有の取引数の規模や税額計算の技術的側面に配慮し、Input Taxの定率控除が特例として認められているため、コンプライアンスコストは極めて低く抑えることができています。

 

 

商業銀行や投資銀行、リース会社等、準拠法や監督当局の異なるごとにInput Taxの控除率が異なっており、金融庁(MAS)が年次で控除率の見直しを行っていますの注意が必要です。

 

 

 

 

 

2014/10/06  PICスキーム 4th Edition


IRASは9月30日、PICスキームの新しいパンフレットを発表していますが、
今回はどの企業でも適格支出となりやすい「従業員教育・訓練費用」について確認したいと思います。

「従業員教育・訓練費用」には、外部の機関を利用した場合のコストと、内部研修を行った場合のコストの両方が対象となり得ます。特異な例として、内部研修の講師となる担当者に対する給与・報酬のうち、その内部研修に対応する部分についてはPIC適格支出となり、400%特別控除、又は60%補助金(注)のいずれかを受けることができます。また内部研修に際して外部のスペースを賃借した場合には、そのレンタル料もPIC適格支出を構成します。さらに、研修資料作成のための図書費や事務用品費、研修期間中に提供する食事に係るコストなども対象です。

 

一定の認定教育制度以外の教育・訓練費用については、年額$10,000までという対象支出額の上限が設けられていますが、税負担や財務負担を大きく軽減してくれる制度ですので是非有効活用して下さい。

 

注:シンガポール市民である従業員が3人以上在籍していることが条件。

 

 

 

 

2014/10/01  税関職員を含むGST不正還付の摘発

 

IRASは先月25日、GSTの不正還付につき立件された逮捕者の中に、税関職員が含まれていたことを発表しています。

不自然な還付請求を認識することのできる情報分析モデルを活用して発見された今回の事件は、インド国籍の4人と、一人のシンガポール人、及び税関職員の合計6人の逮捕者を出すこととなり、税関職員に対しては、29回に亘って11400ドルの贈賄を受けた容疑がかかっています。今回のケースは汚職調査局(CPIB)がさらなる調査を行うこととなっており、シンガポール税関とIRASもその調査に緊密に協力していくとされています。

 

税関職員を巻き込んだ今回の事件の衝撃は大きく、類似事件の摘発と厳しい再発防止策の発表が予想されます。

 

 

 

 

 

 

2014/09/24  OCED: 税源浸食・利益移転対策への提言

 

OECDは9月16日、現行制度のギャップを突いた税務プランニングによる税源浸食と国際的利益移転の問題に対する提言を発表しています。

この提言は、昨年7月にOECD正式・準加盟国を含む44か国間とG20国において承認されたBEPSレポート(Base Erosion and Profit Shifting: BEPS)に基づいており、15の主要対応領域と、7つの第一次アクションプランからなっています。

 

<第一次アクションプラン>

  • デジタル経済システムにおける税務問題への対応
  • ハイブリッド・ミスマッチへの中立的な法制度の整備を通じた、国家間の法人所得税制に対する統一的対応
  • 有害税制に対する対応
  • OECD国際基準の趣旨を実現する制度の再構築租税条約回避の防止
  • 無形資産に係る移転価問題への対処と創出された経済的価値の結果の整合性の確保
  • 移転価格文書とテンプレートの整備による税務行政執行の予見可能性の向上
  • 二国間条約から多国間条約の実現可能性を検討することによるBEPS計画の迅速な実行

 

 

BEPS(税源浸食と利益移転問題)に対する国際間の統一的基準の確立を目指すこの取組については、後日、詳細をご案内したいと思います。

 

 

 

 

 

2014/09/19  外国トラストのサービスに係るGST免税

 

シンガポールのGST上、一定の外国トラストについては、その提供するサービスに係るGSTが0%課税(ZERO-RATING)となり優遇されます。

シンガポールを信託財産の集積地(ハブ)とすることを狙いとして、外国法人信託に対する優遇措置として手当されているこの制度の適用要件は、委託者又は受益者が

  • 個人の場合には、シンガポール市民又はシンガポール居住者でないこと、
  • 法人の場合には、外国法人であること

となります。また、投資対象にシンガポールの不動産が含まれていないことにも留意する必要があります。

 

GSTの負担の有無はファンドの運営コストに大きく影響するため、組成段階での十分な検討が求められます。

 

 

 

 

 

2014/09/13  Input GSTの控除要件: グローバル・コントラクト時の特例


国内でサービスの提供があった場合、サービスのサプライヤーであるGST登録事業者はアウトプットGSTを徴収しなければなりませんが、いわゆるグローバル・コントラクトに基づくサブコントラクトとしてシンガポール国内でサービスが提供された場合、サプライヤーが発行するタックス・インボイスがメインコントラクターに対して発行されるため、サービスの受益者側でインプットGSTの控除要件である「自己宛のタックスインボイス」の入手ができず、控除が受けられない事態が発生します。

このようなケースに対してIRASは特例措置として、一定の証憑の添付及び事前承認により、受益者が支払ったインプットGSTとして申告することを認めるとしています。

 

国内のサービス受益者の競争力に配慮した特例措置ですので、積極的に活用されることをお勧めします。

 

 

 

 

 

2014/09/08  移転価格文書化のパブリック・コンサルテーション

 

IRASは9月1日付で、検討されている移転価格税制(「TP」)の文書化ルールの変更について、パブリックコメントを求めています。

主な内容は、

  • 適時文書化
  • TP文書の種類(グループレベル文書とエンティティレベル文書)
  • TP文書の範囲(取引の事実と背景、TP分析と分析手法の合理性、その他)
  • 遵守事項(適時作成、提出時期、TP文書の評価、保存期間、形式、英訳)

 

となっているようです。

国内取引のみの中小企業、又は、国外関連者との取引に5%セーフハーバー・マークアップを採用している企業以外の企業は、国外関連者間取引価格を証明するTP文書の作成・保存が義務付けられていますので、今回のアップデートも慎重に検討する必要があります。

 

 

 

 

2014/09/01  個人所得税及びGSTの脱税による収監


IRASは8月29日、個人所得税及びGSTの脱税により、パートナーシップの個人事業主である女性を逮捕収監したと発表しています。

調査対象となったのは、YA2005年及びYA2006年の2年間で、不足分として指摘された本税及びこれに対応するペナルティーの合計として$236,420.12(約1,900万円)が科された模様です。この内、$177,315.09(約1,420万円)がペナルティ‐部分であり、本税の300%が科される上に6ヶ月の収監という厳しい処置になっています。この個人事業主には、さらに他の脱税行為に対しても$ペナルティーが科され、総額で$784,264.18(約6,270万円)という重大な金額となり、今後の事業継続は困難なものとなるでしょう。

 

IRASは繰り返し脱税行為に対する厳罰処置を警告し、併せて内部告発等の情報提供に対して追徴税額の15%の報奨金を支払うとして奨励しています。不注意による納税漏れについては、自主的修正申告によりペナルティーの減免が受けられますのでご相談ください。

 

 

 

 

 

2014/08/25  Not Ordinary Resident スキームの活用

 

YA2015からの個人所得税の課税強化を受けて、Not Ordinary Resident (NOR)スキームが注目されています。

1)年間給与収入が$160,000を超えること、2)少なくとも90日以上の海外出張があること条件に、年間給与収入の内シンガポール国外勤務相当額を課税所得から除外して所得税額を算定することができる制度です。ASEAN等の複数国を職域としてカバーしている方の多くが、このNORのタックスメリットを享受できるのではないでしょうか。

 

社宅家賃の評価方法が大きく変わる本年度の申告を見据えて事前の準備が大切です。適用は期限内申請が必要となります。

 

 

 

 

 

2014/08/19 輸入GSTの支払時期の特例

 

本日お問い合わせのあった、輸入GSTの繰延特例についてです。

シンガポールのGSTの課税取引となるものは、国内の商品及びサービスの提供のほかに、国外からの商品の輸入がありますが、輸入消費税(GST)は輸入時において税関で徴収されるのが原則であるため、通常のGST納期限前の支払いが必要となり、キャッシュフローに悪影響を及ぼすこととなります。この弊害に対して、一定の要件を満たす場合には輸入消費税を通常の申告期限まで繰り延べることが許されることから、特にシンガポールから国外に再輸出を行なう企業にとっては、GSTの「前払」が不要となり、ファイナンスコストの大幅な削減とにつながります。

 

MES等の大規模法人向けの制度ではありませんので、比較的に承認要件もゆるやかになります。

 

 

 

 

 

 

2014/08/12  PIC CASH-PAYOUTの不正還付


PICを悪用し補助金を不正に得たとして、デジタル印刷会社が告発されました。

PICに関係する脱税では3件目の事件となるこのケースでは、ペナルティーとして$53,704が課されましたが、これらは架空のタックスインヴォイスによる不正請求が発覚したことにより重加算が相当と判断された模様です。

 

繰り返しになりますが、制度の誤った理解によりPICの過大請求となってしまった可能性がある場合、早急な自主的修正申告をお勧めします。

 

 

 

 

 

 

2014/08/04  PIC 60% CASH-PAYOUTの活用

 

PICスキームの補助金制度として、Cash-Payoutを選択されるケースが多いです。

適格支出の内、年間$100,000までの部分に対して60%の補助金(年間最大$60,000)を受け取ることができるとあって、課税所得の小さいな中小企業や投資後間もない新設法人を中心に利用されています。注意したいのは、

  • CPFの拠出額があるシンガポール人の従業員(株主等以外)が3人以上いること
  • 適格支出として申請した費用の詳細な証憑の保管が必要なこと
  • 適格支出が最低$400以上あること
  • YA2013から四半期ごとの申請が可能となっている

 

等ありますが、中でも、1) 一旦Cash-payoutを選択すると400%所得控除に変更することができないことと、2) 400%控除制度と異なり、適格支出の年間限度額の$100,000は複数年度間で合算することができない、という大きな2つの制約があるため、申請前段階での将来予測が非常に重要となります。

 

 

 

 

 

2014/07/30  事業開始日の判断と損金性の留意点


IRASは、事業開始日の判断基準との関連で、税務上の「損金性(Tax Deductivility: 以下、「TD」)についてのガイドラインを更新しました。

新規設立法人の場合、営業を開始する以前に設立手続き等のための支出が必要となりますが、これら「事業開始日」前に行われる行為に対する支出は、原則として損金算入が認められていません。但し、事業開始日前の支出であっても、収益獲得のためだけに必要な経費と認められるものについては、特例的に、一定の期間内に発生したものに限り「TD」が認められています。

注意したいのは、当該一定期間に発生したとしても、法人設立費や従業員のリクルート費用等は、”準備的”な支出として法人所得税上の「TD」が認められず、申告上損金算入できないとう結論になります。

 

 

新設法人の第一回目の申告に当たり、適用誤りの多い論点ですのでご注意ください。

 

 

 

 

 

2014/07/22  繰り返される脱税への警告


IRASは昨日、GSTを脱税したとして、法人の代表者を実名で公表しました。

脱税の手口は単純で、IT関連機器の輸出入を業とする法人の経費の中に法人代表者の個人的な支出項目を加算して会計処理し、個人的支出に係るインプットGSTも控除して申告し、不正な還付額を受け取っていたものです。

2006年から2008までの3年間の不正還付受取額$61,308(約5百万円)に対し、その3倍にあたる$183,925 (約15百万円)のペナルティ-が課され、さらに18週間にわたって代表者は刑務所内に禁固されます。

 

 

GST脱税者の処分の公表が相次いでいますが、租税回避に対する極めて厳格な姿勢を当局は示していると言えます。不注意により過年度の納付額が過少となってしまっている場合には、早急に自主的修正申告を行うことをお勧めします。

 

 

 

 

 

2014/07/14  GST輸出免税不正利用者へのペナルティー

 

IRASは7月10日、輸出免税制度を利用してGSTの還付を不正に受けたとして、首謀者である個人事業者とその共犯者3名の実名を公表しました。

主犯格のエリック・チアは、15ヶ月の間投獄される上に、ペナルティとして不正還付額の3倍にあたる$1.2M(約9,600万円)が課せられることとなり、共謀者に対しても刑事罰と罰金刑の併科という処罰が待っています。エリック・チアは自身が有するいくつかの法人を活用して意図的な脱税を図っており、その悪質性が今回の重大なペナルティという判決になった模様です。

IRASは、

  • 過去の申告においてミスにより過少申告や過大還付請求となってしまった場合には、積極的な自主的修正申告を行うことによってペナルティの軽減を受けることができること。
  • 違法な脱税行為に関する情報提供者に対して、追徴額の15%の”情報提供料”の支払を約束すること。

の2つを強調して、納税漏れの回収を図っています。

 

GSTの実地調査件数も確実に増加していますので、自社の主要取引のGST上の取り扱いを、定期的に再評価することが重要です。

 

 

 

 

2014/07/09  2014年度所得税制改正案

 

シンガポール財務省(MOF)は2014年度の所得税制改正のドラフトを発表し、パブリックコメントを求めています。

改正案の主な内容は、

  • PICスキームのYA2018までの3年間の延長とPIC+スキームの導入による最大$600,000までの支出に対する400%所得控除の導入(中小企業向け)
  • R&Dスキーム(S14DA(1))上の「追加的50%所得控除」制度をYA2025まで延長。その他、EDBが承認する所得控除制度を2020年3月31日まで延長。
  • 知的財産権(IPRs)の所得控除:WDA(S19B)のYA2020までの延長。特定の商業的価値を有する情報に対するWDAの適用。
  • 個人所得税計算上の扶養控除の拡大

等があげられます。

 

PICとR&Dの両スキームを強化し知的財産権の集積も促すことによって、「付加価値のハブ」を目指しています。バイオメディカルや環境保護に関連する事業等、今後の成長・拡大が見込まれるエリアは、より大きな優遇措置を受けられそうです。

 

 

 

 

2014/07/04  適格R&Dの新ガイドライン

 

IRASは税務上の「適格」研究開発費について、新しいガイドラインを検討しています。

シンガポールを企業の研究開発(R&D)拠点とするために、研究開発費の割増償却を認めてきましたが、2010年からはPICスキームを導入して、研究開発資金誘導政策を一層強化しています。但し、R&D活動の定義が不明確であったことから、過大な税務メリットを申告するケースがみられ、R&Dの性質上も投資金額が巨額になる傾向があることから、税収に与える悪影響が問題視されていました。

そこで、新たに詳細なガイドラインを設定することで税務上のR&D活動を限定し、「適格」なR&D活動ではない支出については、税務メリットを与える対象から排除できるよう準備されています。

 

先ごろ発表されたガイドラインのドラフトを見る限り、「目的」や「手法」、「新規性・技術的リスク」など、適格R&Dとして有すべきの特性が細かに規定されており、また、納税者側で多くの資料の準備と活動記録の保存が必要となるようです。

 

 

 

 

 

2014/07/01  国外口座税務コンプライアンス法(FATCA)の影響

 

米国で施行された国外口座税務コンプライアンス法について、新たな発表がありました。

 

昨年5月14日からシンガポールは米国と二国間合意に向けた協議を開始し、IRASを通じて米国人又は米国法人の金融口座情報を提供することを検討していましたが、本年5月5日に米国財務省が作成した「協力国リスト」にシンガポールが記載されたことを受けて、本年下半期中には二国間合意が正式に署名されることとなりました。

これにより、

  • シンガポールの該当金融機関(FIs)は、2015年1月1日までに、米国IRSに登録して登録番号を入手する必要があります。
  • また、本年7月1日以降に開設される口座について、所定のテンプレートに沿って口座情報を取集して報告する必要があります。

 

 

今後シンガポール財務省とIRASそれぞれから、追加的なガイダンスが発表される予定です。

 

 

 

 

 

 

2014/06/25  GST: コンプライアンス保証助成プログラムの創設

 

IRASが3月末に発表しているコンプライアンス保証助成プログラム(Assisted Compliance Assurance Programme: ACAP)は、GSTに係る社内システム構築を促進するためのコストを助成するものです。

海外との取引が当たり前のシンガポールにおいて、企業規模がおおきいほど、適正なGST納税額算出のための社内システムの整備、人材の配置により多くのコストが必要となります。GST制度自体の複雑性もあり、意図しない納税漏れが膨大な金額になっていることへの問題意識から、IRASは、

  • 最大5万㌦の内部統制構築費用の50%助成 と
  • 自主的修正申告した納税漏れ額に対するペナルティの免除(脱税の意図がない場合に限る)

を2つの大きなインセンティブとしたACAPの導入を決定しました。

 

ACAPの申請には適正な内部統制体制の構築とその承認がが前提条件となり、ハードルは決して低くありません。しかし、一旦ACAP上のステイタスが認められると、Major Exporter Scheme等の優遇税制の自動更新なども認められることから、企業にとってのメリットも小さくありません。

 

 

 

 

2014/06/19  分割払い購入契約/買取選択権付リース契約(Hire Purchase Agreement)

 

クレジット販売などの分割払いが多様化する中、IRASは去る16日、分割払いでの販売契約/買取選択権付リース契約(Hire purchase Agreement: HP) のGSTの取り扱いに関するガイダンスを発表しています。

ポイントは2つあり、

  • 対象のリース契約がGST上のHPに該当するか否かという「定義」を明らかにして、規定の適用可能性判断上の基準を与えています。
  • また、HPに該当する契約である場合に、当事者(売り手、買い手/賃借人、貸し手)それぞれが「賦課、又は控除可能なGSTの金額」の事例が示されています。

 

 

インボイス方式を採用するシンガポールのGST制度ですが、各当事者が課税事業者に該当するか否かでHPの取り扱いに差異が生じます。過不足のない納税額算定の為、注意が必要です。

 

 

 

 

2014/06/16  GST改正案に対するパブリックコメントの要請

 


シンガポール財務省(MOF)は去る6月11日、GSTの改正案に対するパブクックコメント募集を発表しました。

検討されている改正点は。

  • 顧客に属する物品の再輸入時の輸入消費税の全額控除(外注取引促進のため、顧客に属する物品に付加価値を付けるために輸出したものを再輸入する際に課税される支輸入消費税について、その全額を、輸入者(GST登録業者)のGST申告上控除できるものとする)。
  • 法人格を有しない団体(non-legal entities:パートナーシップ、法人格のない社団)が事業用に取得する財産(土地、建物、知的財産権等)に係るGSTについて、全額控除。
  • 船舶に付加される製品等に係るゼロ・パーセント課税(zero-rating)について、その対象取引の明確化(調達サービスや物流サービスが非対象取引であることの明確化を含む)。

 

海外との輸出入取引を有する企業の支払GST(in-put GST)の計算は、優遇制度との関連もあり、簡単ではなく、適用誤りが多くみられるところです。今回の改正が、優遇措置の一部拡大であるとともに、その適用範囲の限度を明確にしている点に注意する必要がありそうです。

 

 

 

 

 

2014/06/12  PIC対象支出の拡大

 

2014年度予算で400%の特別所得控除が可能となるPICの対象が拡大されています。

新たに追加された項目は、

  • Website
  • Automated cover system for open-top containers
  • Landscaping equipment
  • Bi-directional Mass Flow Metering system("MFM")

となっています。

特に、海運や土地開発等の事業関連支出を意識した拡大となっているようですが、Websiteに対する支出が対象に含まれたことについては、はほとんどの企業がメリットを享受できるのではないでしょうか。

 

 

対象リストに明示されていなくても、Case-by-Caseで承認されることもありますので、詳細に検討したいところです。

 

 

 

 

 

2014/06/06  国外所得免税のシナリオと免税申請期限

 

IRASは5月30日付で、国外所得免税(所得税法第13条(12))が許される特定状況の詳しい説明と免税申請期限の延長を発表しています。

免税要件の1つである「所得源泉地国での15%課税」について、当該源泉地国の税法により、欠損金控除、連結納税等の結果課税を受けないような「特定の状況」においても、シンガポールの国外免税措置を受けられることを明らかにしています。この「特定状況」は諸条件とともに列挙されているため、どの国外源泉所得が免税対象となるかは、慎重に検討する必要があります。

また従来、国外源泉所得の送金前までとされていた免税申請期限ですが、YA2014分より延長が認められて、最初に国外源泉所得が生じた(送金された)年の法人所得税申告期限までに申請すれば良いこととなりました。

 

配当、支店利益及びサービス収入といった免税可能項目については、タックスメリットを十分に享受したいところです。 

 

 

 

 

 2014/05/29  就労許可証取得手続きの効率化

 

MOMは先月28日から、労働許可証(EP)及び被扶養者パス(DP)の取得手続きについて、従来の手続きをより効率的にする施策を実行しています。

  • 従来、指紋の登録とパスに張り付ける顔写真の提出は別々の手続きとして行う必要があり、EPSC(Employment Pass Service Centre)に2度通わなければなりませんでした。 この煩雑さを改めて、指紋登録と写真撮影を同日に行なわれることになったため、EPCSでも手続きは1日で完了することになります。
  • EPの更新時に必要なドキュメントの電子申送付が可能となったため、EPSCに出頭する必要がなくなりました。
  • EP等の引渡は従来EPCSの窓口で行われていましたが、今後はEP承認後、登録された住所地に配送されることになっています。

 

EP申請者のビジネススケジュールに配慮した今回の改正を歓迎したいと思います。

 

 

 

 

 

2014/05/21  負債性金融商品の取扱い

 

IRASは負債性金融商品(Hybrid Instruments、以下「HIs」)に関して、その税務上の取り扱いを発表しました。

法人の持分証券と金銭債権の両方の特徴を併せもつHIsについては、税務上の区分により所得控除の可否に差異が生じます。この取扱い上の差異は、HIsの発行者と投資家の獲得する所得に大きな影響を及ぼすため、判断の基準が重要となります。

発表されたガイダンスでは、大まかに、HIsが形成する法律上の権利・義務に着目する「法的形式基準」を第一判断基準とし、「法的形式基準」では判断が不可能な場合等については以下のようなポイントを勘案した事実関係に基づき判断されるとしています。

  • 所有の目的
  • 発行法人の事業に参加することができる投資家の権利
  • 授与された議決権の内容
  • 元本返済義務の内容
  • 払い戻し規定
  • 投資家の返済請求権
  • 国際会計基準等上の区分
  • 清算・整理時の債権回収順位

 

シンガポール法人がHIsの発行者となる場合には、IRASへ事前相談をすることが勧められています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2014/05/19  M&Aスキームの活用

 

2010年度予算で導入されたMergers and Acquisitions Scheme(以下、「M&Aスキーム」)は、適用要件が緩和されています。

シンガポール法人のM&Aによる規模拡大を支援する趣旨から、最終的な親会社が外国法人である場合や既存企業グループのリストラクチャリング活動に対してはこのインセンティブの利用は認められませんが、EDB(経済開発省)又はMAS(金融省)の認可を受けた外国企業は特例的に適用が許されて、M&A取引上生じる株式取得費用又は課税文書の作成に対して、最高$5M(約4億円)の引当金計上と$200K(約1,600万円)の印紙税の減免を受けることができます。

 

このM&Aスキームの適用期限は来年3月31日までとなっていることから、該当する案件がある場合には、早急な準備が必要です。

 

 

 

 

 

2014/05/16  製薬業に対するタックスベネフィット

 

製薬企業の研究開発費用(以下、「R&D」)に対して与えられている以下のタックスベネフィット等についてアップデートがありました。

  • 既存の製薬ビジネスにおける特定製品の製造のための直接R&D費用の所得控除
  • 新規の製薬ビジネスにおけるYA2025までに実施する適格活動に係るR&D費用(知的所有権の取得等)の所得控除
  • 委託研究サービス提供時の独立企業間価額(arm's length price)の適用
  • 知的所有権に対して支払うロイヤリティの実現時期と源泉徴収

 

シンガポールは「製薬業の拠点」となることを目指して多くのタックス・インセンティブを提供していますが、タイやマレーシアも同種の税制を整備してきており、税制における国際間競争が激化しています。

  

 

 

 

 

2014/05/07  国外口座税務コンプライアンス法(US)

 

2010年3月に米国国会で決議された「国外口座税務コンプライアンス法(FOREIGN ACCOUNT TAX COMPLIANCE ACT: FATCA)」は、米国居住者の海外の口座を利用した脱税行為を取り締まるもので、"米国外のすべての金融機関”(以下、「FIs」)に対して米国居住者の金融情報の定期的提供を要求しています。

 

FATCAの規定に違反したFIsは、米国内に有する支店等からの海外送金に対して30%の源泉徴収税を課されることとなるため、相当の強制力を持つものとなっています。このFATCAにたいしてシンガポール政府は、昨年5月14日に米国政府との政府間合意を締結し、シンガポールの各FIsが提出すべき口座情報は、一旦IRASに提出し、その後IRAS経由で米国の内国歳入庁(IRS)に提出されることことなりました。よって、シンガポールのFIsは、今後、要請される口座情報の内容を整理し、定型化された情報をIRASに提供してゆくことになります。

 

同様の政府間合意は諸外国の間で広まることが予想されています。

 

 

 

 

 

2014/04/29 個人所得税:期限内申告率95%


IRASは、去る23日、YA2014年の個人所得税の期限内申告率が95%であったと発表しています。

この発表の中、期限内申告の達成率では昨年と同数であるものの、4月18日の申告期限間際の"駆け込み"申告率が減少し、早期に提出する納税者が増加したことも示しています。SMS申告やGIROの活用により、より申告・納税手続きが簡略化できるようになったことが一因として分析されています。

 

期限後申告に対しては最高$1,000のペナルティーが課せられますので、手続きを逃してしまった方は、IRASからの督促前に自主的期限後申告を行って、ペナルティーの減免を図られることをお勧めします。

 

 

 

2014/04/23 シンガポール雇用法(労働法)規制強化

 

4月1日より施行された改正シンガポール雇用法((又は労働法): Employment Act 以下「EA」)では、違反時の罰則と取締の強化が注目されています。

 

従来、最初の違反(1st offence)の罰金は、最大$5,000(約40万円)とされていたのに対し、4月1日以降は、最大$15,000(約120万円)に引き上げられ、3倍になりました。また、2回目以降の違反については、最大$30,000(約240万円)の罰金が科されることとなり、こちらも従前の取り扱い($10,000)を3倍強化しています。懲役刑については6ヶ月から12ヶ月と変更がありませんが、示談金は最大$6,000が科されることになりました。

また、MOMの担当検査官の権限も大幅に拡大され、労働現場への立ち入り検査や、EA違反者及び違反者と推定される者を逮捕する権限(逮捕権)が与えられています。

 

今後、MOMがどのように強化された規制の運用をしていくのか注視する必要がありますが、なによりも、変更されたEA上の権利義務を正確に理解し導入することが大切になります。

 

 

 

 

2014/04/15  GST未登録業者への追徴課税処分

 

IRASは4月11日、GSTの登録をせずに不当に納税を免れたとして、金属製ドア・サッシ等の製造業者に対し、脱税に対するペナルティーを含む$170,000(約1360万円)の追徴と、罰金$5,500の納付が命じられたと発表しました。

シンガポールの税制上、年間の売上高が$1Mを超える(又は超える見込み)である場合は、GST登録業者の届け出をしなければならないため、定期的に登録要件に合致するかどうかアセスする必要があります。また、会計年度、暦年期間にかかわらず、継続する12ヶ月の売上高が$1Mを超えた場合には、30日以内にGST登録が求められます

 

GST登録に違反した場合、最高10000ドルの罰金と10%年利計算のペナルティーが過去にさかのぼって課されるため、膨大な追徴金額となることがあります。自主的修正申告については、ペナルティの減免が期待できるため、追徴リスクを抱え続けることは得策ではありません。

 

 

 

 

 

2014/04/04  居住者証明書

 

お問い合わせの多い租税条約についてです。

 

シンガポール税制上は、いわゆる「管理支配地主義」に基づき企業の居住者としての地位を決定して、租税条約の適用関係が判断されます。外国企業との取引する際、外国(所得源泉地)の制度により課税を受けますが、シンガポールと租税条約を締結している相手国であれば、減税や免税の特典を享受して、二重課税を排除することができます。この場合、シンガポールの居住者であることの証明として所得源泉地国の課税当局に提出するのが「居住者証明書(CERTIFICATE OF RESIDENCE: COR)」です。

名義上の法人(Nominee Company)や外国法人のシンガポール支店等は管理支配がシンガポール国外で行われているため、原則居住性を認められず、居住者証明書を得ることができません。

 

CORの申請はオンラインで可能で、7営業日以内に発行されます。

 

 

 

2014/03/28  GSTの事前確認制度

 

IRASは3月21日、Good and Service Tax (GST) 適用上の明瞭性と確実性を高めるためとして、事前確認制度(Advance Ruling System)の導入を発表しました。

多国間取引がありふれたものとなった現在では、取引の多様性と複雑性によって、GSTの納税義務の判断に困難が生じるケースが多くなってきています。この事前確認制度は、納税者側で納税義務の判断に窮する場合に、IRASが納税者とともに課税関係を整理し、適格な回答を提供してくれるシステムとなります。制度の利用は有料とされ、担当官の費やした時間に応じた料金を支払う必要があり、又、申告期限の1月前までに申請書を提出することが原則となります。期限直前の駆け込み申請については、通常の利用料の2倍(又は3倍)の金額がかかりますので、制度の活用を考えておられる納税者の方は注意が必要です。

 

 

 

 

2014/03/14  PIC+ スキーム

 

2014年予算で新規導入が発表された"PIC+"スキームですが、YA2015(2014年度)から適用が可能です。

6つの適格活動に関する支出のうち、年間$600,000(約48百万円)までの部分に対して400%の所得控除を受けることができます。適用期限であるYA2018までの3年間(2016~2018)については、それぞれの年の限度額を通算することができるので、$1,800,000(約1億44百万円)までの支出を任意に按分することが可能です。所得控除額にして、最大$7.2M(約5.8億円)のタックス・メリットになりますので、十分に活用したいところです。

 

適用対象となる中小企業(SME)の要件は、

  • 年間売り上げが$100M以下(約80億円以下)
  • 従業員数が200人以下

2つのいずれかを満たすこととされていますが、判定の際は連結ベースで各要件に当てはめる必要があることにご注意ください。

 

 

 

 

 

2013/03/11  詐欺メールに注意

 
IRASは、金融情報や金銭の詐取を目的としたeメールに対する注意を呼びかけています。

メールの内容は、「2013年度の税金還付について、添付ファイルを参照ください」というIRASを発信者として偽装する文面が記載され、添付されたPDF-fileを開くことでコンピューター・ウイルスに感染するようになっているようです。eメールを受けとった方は、決して添付ファイルを開いたり、メールに応答したりすることなく、直ちに削除して下さい。メールは、SMSで送られてくることもあるようなので、反射的にファイルを開けてしまうケースが多発しているようです。

 

4月15日(電子申告の場合は4月18日)の所得税申告期限が迫るこの時期をねらった悪質な詐欺メールに、くれぐれもご注意ください。

 

 

 

 

2014/03/05  OECD情報交換規定の強化


海外の銀行口座を利用した脱税行為が依然として深刻な問題との認識の下、OECDは先月13日、先のG20で決定された、国際課税に信頼性と公平性を確保し、脱税や課税回避行動を規制するためのシステムとして、「自動情報交換制度に係る単一国際基準」を発表しました。

 

OECD加盟国内(早期適用承認国含む)であれば、いずれの国の金融機関からも、自動的に自国の居住者の口座情報を収集することが可能となるこのシステムは、金融機関に対して遵守すべきデューデリジェンスを規定し、口座の種類や対象となる納税者の報告を義務づけるものになります。エンゼル・ガリアOECD事務局長は、「この単一国際基準により状況は一変する。金融システムの国際化は自国外での投資・資産保有をありふれたもにしてきたが、この新システムにより国際的な課税協力体制が整うことになり、課税権の確保と租税回避の撲滅を求める各国政府を公平な立場に置くことができる。」とコメントしています。

 

 

 

 

2014/02/28  2014年予算の発表


先週金曜日に発表されたシンガポール2014年度予算において、主要な税制改正点が明らかにされています。

法人所得税に影響する点としては、

  • PICスキームをYA2018までの3年間の延長
  • 中小企業をサポートするPIC+スキームの導入
  • R&D投資促進税制のYA2025までの10年間延長
  • 知的財産投資税制のYA2020までの5年間延長

などがありますので、十分なタックスメリットを取るための検討が必要です。

これに対して個人所得課税においては、駐在外国人を対象にした課税強化策が多数盛り込まれていますので注意が必要となります。

 

ASEAN隣国との外資誘導競争が激化する中で、自国民の積極雇用を図る政府方針が税制改正で明確にされていると言えます。

 

 

 

 

2014/02/19  PICスキームによる脱税

 

IRASは、去る14日、PICスキームを利用した脱税行為があったとして、法人及びその法人の取締役双方の実名を公表しました。

 

PICの要件を満たさず不正に入手したS$60,000に対して、300%のペナルティーとしてS$180,000、加えて罰金として8,000ドルが課される模様で、明後日21日に判決が下されるとしています。PICによる脱税で法人と取締役の双方が同時に告発されるのは、昨年公表されたコンピューター機器の卸売業者に続き2件目となります。IRASはPICを利用する脱税行為に対して監視を強めており、最高400%のペナルティーや罰金の最高額50,000ドル、5年間の収監という厳しい態度で挑むとしています。

 

 

 

2014/02/14 交際費に係るGSTの控除

 

GSTの申告上、交際費としての支出に係るInput tax は、納税者が当該納税者宛てのtax invoice、もしくは、簡易化されたtax invoiceをを保有・保管しているかしている場合には、1000ドルまでの支出に係る額を限度として控除可能とされています。

この原則的取扱いに対し、2014年2月1日からの特例として、1000ドルを超える飲食代の交際費についても、納税者が領収書等の証憑及び接待の相手方等の明細を記載した資料を保存している場合には、input taxを控除できることとなりました。

 

但し、当該特例は、交際費の内、飲食費用についてのみ認められるものであり、接待のための施設等のレンタル費用などは対象とならないことに注意が必要となる。

 

 

 

2014/02/08  現物給与にみる個人課税強化

 

YA2015からの取扱いとして、雇用者が支出する従業員の居住用住宅費用に関する個人所得課税強化がアナウンスされています。

従来の取扱いでは、居住用財産の年間価値(Annual Value)と年間給与額の10%のいずれか低い方を現物給与とすることが認められてきました。しかし、本年2014年分の所得税を算定する上では年間給与10%が認められず、不動産の年間価値のみでの課税が行われることとなり、課税所得の急激な増大が見込まれます。

 

住宅市場の急騰・高止まりするの中での今回の課税強化策は、外国人労働力規制方針とも一致して、シンガポールの外資誘導税制が転換期に来ていることを示しています。

 

 

 

 

2014/01/28  PIC対象のIT製品

 

YA2015まで適用可能なPICスキームですが、IRASは適用対象となるIT製品・サービスについて産業別に事例を公表して積極的な適用を呼びかけています。

飲食業に関して言えば、

  • 自動皮むき機等
  • 自動焼き器
  • 自動砕氷器
  • オーブンセット
  • 食洗機
  • ゴミ昇降機
  • 製麺機
  • 梱包器
  • 野菜等の特別な裁断器

その他事例として挙げられない項目であっても、ケースバイケースでPICの適用が受けられる可能性があることから、積極的に事前確認の申請をされる事をお勧めします。

 

 

 

 

 

 

2014/01/22  非居住者等の教育資金一括贈与非課税の適用

 

昨年日本で導入された教育資金の一括贈与の非課税(1500万円を限度)の利用が進んでいます。

 

30歳未満の者受贈者が、直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母)からまとまった資金の贈与により教育を受けることができ、とりわけ金融資産の保有率が高い高齢者からの財産移転を加速させて、若年層の国際競争力を助ける制度となることが期待されています。この制度は日本の居住者である受贈者のみならず、外国籍を有する受贈者又は日本に住所を有しない受贈者であっても適用要件を満たす限りにおいて適用可能であることから、欧米やシンガポールで居住し教育を受ける場合にもメリットがあります。

 

外国籍や非居住者が適用申請する際、戸籍謄本や出生届出書の写しの提出、納税管理人の届け出などが必要となります。

 

 

 

 

2014/01/18  シンガポール・モロッコ租税条約の施行

 

2007年1月に締結されていたシンガポールとモロッコ間の租税条約が、本年1月15日付で施行されました。

この租税条約により、両国間の貿易と投資が促進され、二重課税リスクの余地が低減されることとなります 。とりわけ、船舶及び航空機を利用する国際運輸についての所得源泉地国における免税措置と、配当・利息の支払い時に源泉地国に納付する際の源泉徴収税率の緩和を図ることが可能です。

 

適用は2015年1月1日以後の取引からとなります。

 

 

 

 

2014/01/14  シンガポール労働法改正

 

1968年に制定されたシンガポール労働法は、企業の競争力を重視して、この国の発展に寄与してきました。

経済成長を経て先進国の一員となった国民の労働環境に対するニーズは高度で多様となり、年々、より労働者重視の労働法へと方針転換を求める声が大きくなっています。これらの要請にこたえるため、政府は、労働者各層の一層の保護を実現する以下のような改正を発表しています。

  • 事務員等、非現場労働スタッフ給与の基本給の上昇($2,000 --> $2,500)。
  • 基本給が$4,500以下のPME(専門・管理職スタッフ)について、労働法の一般既定の適用を認める。
  • 社宅家賃や福利厚生費用の給与からの控除額限度額を、給与の25%以内とするルールの導入。
  • 退職給与規定適用要件を、勤務開始後2年経過時とする(改正前は「3年」)。

 

上記の他、雇用者側に配慮した改正点等があり、確認が必要となっています。

適用開始は、一部を除き、本年4月1日からとなります。

 

 

 

 

2014/01/10  平成24年度相続税申告状況 (日本)

 

各国税局から平成24年度の相続税の申告状況が発表されています(沖縄国税局は未発表)。

死亡者125万人の内、相続税の対象者となった被相続人は52,000人程で、課税割合は4.2%になります。課税価格は1兆1千億円余りで、H23年と比較して4%程増加しました。1人当たりの相続税納税額は、全国平均で2,403万円となり是前年とほぼ同額となっています。東京国税局に限って言えば、課税割合は7%と前年から0.1ポイント上昇し、課税価格も11.3%増加しました。

 

金融政策であるインフレターゲットも成果を見せているため、不動産や金融商品等の財産価値も上昇しています。平成27年度からの相続税基礎控除等の縮小を見据えての相続税プランニングが急務となっています。

 

 

 

 

2014/01/09  マレーシア GSTの導入

 

マレーシアの2014年予算の中で、2015年4月からのGST (Goods and Service Tax)の導入が発表されています。

従来のSales TaxとService Taxには、二重課税の排除ができない点や移転価格上の問題など制度的不具合があったため、企業にとって価格競争力に影響するものとなっていました。今回、Sales TaxとService Taxが廃止されてGSTが導入されることにより、公正で透明性の高いシステムになることが期待されています。標準税率は6%とされ、10%であるインドネシア、ベトナム、カンボジア、フィリピン、ラオス、7%であるタイ、シンガポールといった中、ASEAN諸国で最も低率なGSTとなります。また、米や砂糖、塩等の基本食品や家庭用の水道、電気の一定額、政府サービス、バス、電車、LRT、タクシー等の公共交通機関、居住用財産の売買等は非課税となるようです。

 

GSTの導入に伴い、所得税減税もセットで施行され、国民負担と国際競争力に配慮した形となっています。

 

 

 

 

2014/01/01  初春のお慶びを申し上げます

 

あけましておめでとうございます。

IRASは、昨日12月31日付けで、税務申告上の証憑の整備・保存規定について、いくつかの改定と新設を発表しています。特に、一定の小規模法人についてはレシートや領収書といった原始証憑の保存を免除するSRK規定(Simplified Record Keeping Requirements)を新たに規定して、人的リソースの限られた零細企業の事務負担を軽減しようとしています。その他、GST登録事業者や非登録事業者の証憑整備規程を改定しているため、確認が必要となります。

 

2014年がスタートしましたが、今年もシンガポールをはじめとするASEAN諸国の税制、会計、法人維持手続き等に関する情報とサービスをご提供してまいります。