シンガポールの税制概要
シンガポールに投資する方々が挙げるその投資意思決定の理由として、地理的戦略性や政治的安定性などの要因がありますが、中でも第一に挙げられるのがシンガポールでの法人の設立とその運営の容易さです。これは、法人及び個人に対する魅力的な所得税率や課税標準の緩和措置、キャピタルゲイン課税がないことやシンプルな課税制度、及び多国間に整備された租税条約網といったビジネス・フレンドリーな税制に拠っています。
また、シンガポールの税法は英国のコモン・ローの伝統を引き継いでいるため、必ずしも大陸法のように法律や政令等の成文法により明確化されているわけではなく、過去の判例や当局の判断に基づいて解釈される余地が多分にあります。
1. シンガポールの税金
シンガポールの税制はIRAS:内国歳入庁 ( http://www.iras.gov.sg/irasHome/default.aspx)が所管し、税金の種類は以下のものがあります。
2. 課税所得の範囲
シンガポールでは所得税法(Income Tax Act: ITA)が法人所得税と個人所得税の両方を規定しています。パートナーシップ等の個人であれ法人形態であれ、シンガポールで商取引や専門的サービスを行う主体は、シンガポールを源泉とする所得に対し課税を受けます。その他、一定の国外源泉所得の内、シンガポールへ送金されたものについても同様です。
3. 所得税の概要
1) Corporate Income Tax Rates & Partial Tax Exemption:法人所得税率と部分免税
シンガポールの標準税率は17%で世界でもっとも税率の低い国のひとつになっていますが、部分免税措置により、実際の納税負担率(実行税率)はさらに低いものになります。
部分免税措置は以下のように定められており、免税割合を考慮に入れた場合、課税所得S$300,000 (約24百万円*注)までの実行税率は8.35%程になります。(注:S$1 = JPY80換算、以下同じ。)
課税所得 免税割合
さらに、
新たにシンガポールに設立された法人で、その株主が20人以下の個人から構成されるもの(Exempt Private Company: EPC)については、設立後3年間、課税所得のうち最初のS$100,000(約8百万円)までは0%税率(税負担なし)が適用されます。
事例とし、上記EPCで毎年の課税所得がS$1,000,000(約80百万円)のケースの納税負担を計算すると以下のようになります。
<設立後、最初の3年間> | |||
課税所得 | 税率 | 税額(S$) | |
最初のS$100,000 | 0% | 0 | |
次の$$200,000 | 8.5% | 17,000 | *50% exemption |
S$300,000 - S$1,000,000 | 17% | 119,000 | |
Total | 136,000 | 実行税率: 13.6% |
<4年目以降> | |||
課税所得 | 税率 | 税額(S$) | |
最初のS$300,000 | 8.35% | 25,075 | *Partial exemption applied |
S$300,000 - S$1,000,000 | 17% | 119,000 | |
Total | 144,075 | 実行税率: 14.4% |
2) Individual Income Tax Rates:個人所得税率
個人所得税は累進税率が適用されますが、Tax Resident(税務上のシンガポール居住者)と認められる場合の最高税率が20% (課税所得がS$320,000超の部分:約25.6百万円超)と、非常に国際競争力の高いものになっています。
事例として、課税所得S$350,000(約28百万円)の場合の税負担額を計算すると以下のようになります。
<YA2007からYA2011まで> YA: Year of Assessmentの略(たとえばYA2010は、2009年中に終了する会計年度を意味する)
課税所得 |
税率 | 税額(S$) | |
最初のS$20,000 | 0% | 0 | |
次のS$10,000 | 3.5% | 350 | |
最初のS$30,000 | 350 | ||
次のS$10,000 | 5.5% | 550 | |
最初のS$40,000 | 900 | ||
次のS$40,000 | 8.5% | 3400 | |
最初のS$80,000 | 4,300 | ||
次のS$80,000 | 14% | 11,200 | |
最初のS$160,000 | 15,500 | ||
次のS$160,000 | 17% | 27,200 | |
最初S$320,000 | 42,700 | ||
S$320,000超の S$30,000部分 |
20% | 6,000 | |
課税所得S$350,000 の所得税合計 |
48,700 | 実行税率: 13.9% |
また、YA2012(2011年中に終了する会計年度)からは、以下のように更に低い適用税率が受けられます。
<YA2012~>
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3) Single-Tier Tax System:一段階課税
シンガポールでは2003年から、Single-Tier Income Tax System (一段階課税システム)を採用し、株主に二重課税が発生しないようにしています。すなわち、法人段階で課税を受けた所得に対しては、その後株主に配当があった場合でも株主が得た配当所得は非課税となります。
Updated on Sep 10th 2012
Last updated on June 12th 2013