個人所得税の概要
シンガポールでは日本に見られるような給与所得の源泉徴収制度がありません。 したがって、各納税者個人は毎年課税所得を計算してIRASへ申告する必要があります。
また、課税所得を構成するのは雇用主から金銭で受取った給与のみならず、担税力があるとみなされる金銭以外の経済的な利益(現物給与)も含まれます。
1.居住者、非居住者の区分(Tax Resident or Non-resident)
シンガポールでは、税務上の居住者(Tax Resident)であるか非居住者であるかにより、適用される個人所得税率が異なります。
1) 居住者(Tax Resident)の定義
次のいずれかの基準を満たす個人は、シンガポールの税務上の居住者とみなされます。
2) 非居住者の定義
上記のいずれの基準に照らしても該当しない場合には、シンガポール税制上の非居住者として取り扱われます。
3) 再評価の申請
税務上の非居住者であるとして課税を受けた者であっても、居住者としての要件を満たす場合には、過年度にさかのぼり居住者としての地位を認めてもらうよう再評価の申請をすることができます。
<再評価により居住者の地位が認められるケース>
請求は、所定の再評価申請書に必要事項を記載し、雇用主からの勤務実績資料と就労許可証のコピーをIRASへ提出することにより行います。
2. 適用される税率 (Income Tax Rates)
1) 居住者の適用税率
シンガポール居住者に対しては、以下のような累進税率が適用されます。
また、税率の変更により、YA2012より、より低い税率の適用が認められています。
From YA2007 to YA2011
Income(所得) | Tax rate (税率) |
最初の20,000ドル | 0% |
次の10,000ドル |
3.5% |
次の10,000ドル |
5.5% |
次の40,000ドル |
8.5% |
次の80,000ドル |
14% |
次の160,000ドル |
17% |
320,000ドル超 の部分 |
20% |
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From YA2012
Income (所得) |
Tax Rate (税率) | |
最初の20,000ドル | 0% | |
次の10,000ドル | 2% | |
次の10,000ドル | 3.5% | |
次の40,000ドル | 7% | |
次の40,000ドル | 11.5% | |
次の40,000ドル | 15% | |
次の40,000ドル | 17% | |
次の120,000ドル |
18% | |
320,000ドル超の部分 | 20% |
2) 非居住者の適用税率
税務上の非居住者の場合には、給与所得(Employment Income)対して扶養控除などの所得控除は認められず、15%の税率が適用されます。但し、算定された課税所得金額が、居住者として計算した場合の課税所得より低い金額となる場合には、居住者用の課税所得に対して税率を乗じることとされます。
また、役員報酬(Director's fee)やコンサルティング報酬(Consultation fees)等の給与所得以外の報酬については、20%の税率が適用されます。
3) 短期滞在者(60日以下の場合)の給与所得課税の免除
上記2)で示した税務上の非居住者に対する原則的取り扱いにかかわらず、シンガポールでの就労により給与所得が発生する場合でその就労期間(滞在期間)が60日以下のときは、給与所得課税が免除されます。但し、取締約の役員報酬や芸能人の受ける報酬については免除されませんので注意が必要です。
4) 租税条約上の短期滞在者免税
日本とシンガポール間の租税条約により、滞在期間が183日以下等の適用要件のすべてを満たす場合に限り、滞在期間が60日超となる場合であっても、シンガポールでの給与課税は発生しません。
適用要件
手続き
3. 課税所得金額 (Chargeable Income)の計算方法
課税所得金額は、以下のように総所得金額 (Total Income) から必要経費を控除して所得控除前課税所得金額(Assessable Income)を算出し、これから人的控除項目の合計額を控除して計算されます。
Total Income 10,000
Expenses& Donations
A 3,000
B 4,000 -7,000
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Assessable Income 3,000
Personal Reliefs
C 500
D 300 -800
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Chargeable Income 2,200
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4. 申告・納税手続き
法人同様、賦課年度 (Year of Assessment: YA)の申告書を使用して、前年分の所得について申告手続きをします(例:2012年1月1日から12月31日までの所得は、YA2013の申告書を使用する)。
1) 使用する申告書
税務上の居住者 (Tax resident)の場合
税務上の居住者 の給与所得については、Form B1と呼ばれる申告書を使用し申告することになります。また添付書類として、雇用主である法人が作成したForm IR8A (電子申告の場合にはForm IR8E)を付ける必要があります。
税務上の非居住者 (Non-Tax resident)の場合
税務上の非居住者は、Form Mという申告書書式を使用します。
2) 申告期限
申告期限は4月15日(電子申告を選択する場合には、4月18日)です。
3) 賦課決定通知書と納付
IRASからの賦課決定通知書 (Notice of Assessment)を受け取ったら日から1ヶ月以内に、通知書記載の金額を納付する必要があります。
一括納付が原則ですが、GIROと呼ばれる自動引き後しサービスを利用することにより、最大で12回の分割納付を申請し利用することも可能です。
Last updated on Sep 10th 2012